第53話:予知 vs 予知
複合異能力
・水鳥 + 江上 → 未来予知
――――――――――――――――――――
超神威の開始地点では、リーダーの冬海 氷河を含めた5人のメンバーが戦闘開始に備えていた。
「いつも通り行くぞ」
『5…4…3…2…1…開始』
開始直後、氷河は異能力「氷使い」を発動して周囲にバリケードを作り、白金 碧は異能力「未来視」を発動して様々なパターンの未来を確認し始めた。
「あれーおかしいな。海元高校の奴ら、いつもみたいに水の壁をザバッと作らねえんだな……」
根藤はそう言いながら白金の方を見る。普段より明らかに動きの決定に時間が掛かっており、不審に思った氷河は白金に声を掛ける。
「碧、どうかしたか?」
「……ふふっ」
(碧が笑った?)
「ごめんごめん、こういうのは久しぶりだったから」
「まさか……」
「そのまさかだよ」
白金は続ける。
「向こうも予知能力を使ってるみたいだね」
その頃、海元高校の開始地点では水鳥 雫と江上 奈瑠が手を繋ぎ、複合異能力「未来予知」を発動していた。
「あちこちで敵と遭遇しています。なんか気持ち悪いですね」
「予知能力者同士で真逆のことしようとするとこうなるんだね」
目を閉じたまま動かない2人に、津和崎 徹が声を掛ける。
「大丈夫そうか?」
「埒が明かない。これじゃ動く前に突然死のタイムリミットが来ちゃいそうです」
「昨日も言ったけどさ、予知能力者同士の戦いってどれも似たような感じになるんだよな」
「…………はぁ」
水鳥はため息をつくと目を開ける。
「……雫先輩?」
「仕方ないか。それじゃあ……」
水鳥は周りのメンバーに指示を出す。
「1番強いフォーメーションで向こうの開始地点に行こっか。中間地点辺りで敵とぶつかるはず」
「「了解」」
数分後、超神威のメンバーたちは海元高校の開始地点に真っすぐ向かっていた。先頭は
「リーダーが風呂場でコケたときの並びじゃねぇか」
「お前ぶっ刺されてぇのか」
ここで、根藤が予め展開していた植物の根が海元高校のメンバーたちの接近を察知する。
「前方から海元高校のメンバー4人が接近中。もう刺していいか?」
「無駄だよ。水鳥と江上が今も予知を発動してるからね。全部避けられて終わりだよ」
更にしばらく進んだところで、前方を歩いていた凍次と中島が足を止める。
「見つけた」
中島の視線の先には、海元高校の大橋 雷斗と津和崎 徹の姿があった。
大橋は武器の長剣を、津和崎は2枚の円盾を構える。
「面白いぐらいの真正面衝突ですね」
「これぞ予知能力対決って感じだな。一周回って超シンプルな総力戦になる」
津和崎は円盾の片方を投げながら異能力「回転操作」を発動。円盾は高速で回転しながら津和崎の周りを飛び始めた。
「行くぞ」
「おう!」
超神威の中島は海元高校の2人に向かって距離を詰める。凍次は異能力「氷使い」を発動して氷の刃を生み出し、中島に続く。
それに対し、大橋は異能力「雷使い」を発動して頭上に雷雲を生み出すと凍次に向かって雷を放つ。
『ドーーン!』
しかし、中島は異能力「念動力」を発動して目の前の地面から土を持ち上げ、前方から飛んできた雷を防ぐ。
「ナイスッ!」
凍次は雷が防がれたのと同時に津和崎に突進し、氷の刃を振るう。
『ガキーン!』
津和崎は持っていた円盾で氷の刃を受け流す。凍次はすぐに次の剣撃を加える。
「凍次!」
「っ!」
中島の声を聞いて、凍次は咄嗟に飛び退く。
『ギュイン!』
凍次がいた場所の真上から円盾が高速回転しながら降下し、地面を掠めると再び津和崎の周りを飛び始める。
「すごいだろ? 盾ってのは……」
そう言いながら津和崎は構える。
「守りにも使えるんだぜ?」
「…………」
「いやそこは何か突っ込むとこだろ」
ここで、潜伏していた藻部山が異能力「瞬間移動」を発動して水鳥たちのところに戻ってきた。
「あれ、戻ってきた」
「あいつ鬱陶しい。全く隙が無い」
「白金さん? 殺すの1番簡単そうだけど」
「殺すのは簡単だよ。殺した後に生きて離脱するのが難しいだけで」
藻部山は白金の背後に瞬間移動して確実に殺害する作戦だったが、白金の背後に守備担当の氷河がいることで殺害後の離脱が不可能な状況になっていた。
「でも殺らなきゃだよね」
「そうだね。正直、そろそろ予知を解除しないと厳しいかな。徹さんたちだけで超神威の前衛を相手するのは荷が重いし、もたもたしてたら根藤の異能力が飛んでくる」
「仕方無いなあ」
藻部山は水鳥の耳元で囁く。
「MVPは雫ちゃんに譲ってあげる」
藻部山は再び瞬間移動を使い、水鳥たちの元を離れる。
(あーあ、最後まで戦いたかったなー)
武器の短刀を抜くと瞬間移動を使い、白金の背後に回る。
『グサッ』
藻部山が白金の首を切るのと同時に、氷河が異能力で生み出した氷柱で胸を貫かれた。
(みんな、後は任せたよ)
「白金 碧、死亡」
「超神威、残り4名」
「藻部山 日和、死亡」
「海元高校ビーチバレー部、残り4名」
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