第3話

第3話「前世の記憶が疼く夜」


俺の名前は神崎蓮、高校2年。

昨日まではただの冴えない男子高校生だった。

だが、突然現れたゾンビに襲われたとき、俺は自分でも驚くほど自然に「刀」を手にしていた――いや、落ちていた木刀だったか?でも確かにあれは、刀のように扱えた。


あの瞬間、俺の中で何かが“目覚めた”気がした。



夜の街は、静まりかえっていた。

避難勧告の警報が鳴り響いたあと、誰もが自宅に閉じこもっている。

だが俺はひとり、家の裏の小さな神社に来ていた。


「ここ…見覚えがある」


懐かしいような、切ないような、胸の奥がちりちりと痛む。


(これは前世の記憶…?)


ふと風が吹き、鳥居の陰に何かが現れた。

腐った皮膚、血の臭い――ゾンビだ。


3体。


だが、恐怖はなかった。

むしろ、心が静かに燃えていた。


「……来い」


その瞬間、俺の背中に熱が走る。

腰に差していた竹刀袋から抜き出した“それ”は、まるで本物の刀のように輝いていた。


「斬るべき敵が目の前にいる。ただ、それだけだ」


――斬撃一閃。

一体目の首が、宙を舞った。


二体目が襲いかかる。だがその動きは、俺には遅すぎる。


(俺は……戦える)


残りも一撃で沈めたとき、俺の耳元で誰かの声がした。


「その力、お前の“前世”がくれたものだ」


振り返っても誰もいない。

ただ、空には満月が輝いていた。


(俺の前世…サムライ? なんなんだよ、一体)


けれどもう、逃げるつもりはなかった。


この世界がゾンビに汚されていくなら――

俺が狩る。それが俺の“役目”だ。

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