第十五章：真実が導く分断と歌声が示す活路

戦場に流れ込んだ「あまがみ」の歌声は、ただの旋律ではなかった戦闘地域を覆う濃霧を切り裂き傷痕を曝け出し兵士たちの瞳は幻影に縛られ

それは大地の奥深くに刻まれた古の記憶を震わせ

天空の彼方から裁定を呼び覚ます響き残像は虚妄ではなく真実その

ものの残滓であり人の理を超えた啓示で映し出した真実の幻影は戦の庭

全体に衝撃を与え王国の戦士は己が仕えてきた王の罪に打ちひしがれ動揺し敵軍は怒号と混乱の極みに包まれ秩序は完全に崩壊した謎の飛行船の異形の兵士たちですら一瞬動きを止め異様な光景を確認しその刹那の静止を余儀なくされた

だが次の瞬間、異形の兵士たちから大地を焼き爛れさせる光弾が放たれ着弾する度に腐食の波動が大地を蚕食する空気は金属のような匂いを帯びていく、この星そのものを蝕む毒の雨で

すぐに無慈悲な攻撃を再開し闘いの庭は死と破壊の坩堝と化していく周囲の兵隊たちの士気を蝕んでいった混乱はすぐさま死と破壊の多くのものが混じり合って渦巻いている状態へと変わった

「アッシュ」は剣を握りしめたまま立ち尽くした幻像が映し出した自らの故郷が滅亡した惨劇そして「リーネ」の苦しみの根源に改めて心臓を鷲掴みにされ痛みを感じていた幼い「リーネ」の涙と家族が犠牲になる光景が脳裏に焼き付いて

その記憶が目の前の「リーネ」と重なり彼の剣の動きに兄としての迷いを生じさせていた

それでも彼は「あまがみ」を守り、この真実がもたらした混乱を収めるために剣を振るっていた

「「リーネ」……なぜ……お前はそこまで真実を知っているんだ？……」

「アッシュ」は苦痛に顔を歪めながら剣と剣が

ぶつかる金属音や怒号と断末魔が混じり響く戦線の喧騒の中で「リーネ」へと問いかけ彼の声は血に濡れた祈りのように掠れて掻き消されそうに

なりながらも届いた彼女は「アッシュ」の問いに一瞬の逡巡の影を見せたが「リーネ」の銀河を映した眼に宿る光は

もはや少女のものではなかった、すぐにその目を冷徹な輝きで満たした

しかし炎のように燃え盛りながらも彼女は応える

「兄上は何も分かっていない！王族の隠蔽は血にまみれ許せば更なる犠牲を生むだけだ私たちも偽りの礎に捧げられ平和の贖罪のヤギの上に立つ象徴に過ぎぬのだ！」

彼女は叫びと同時に「アッシュ」の隙を突いて鋭く閃き剣を繰り出す

その剣筋は、かつての温もりなど微塵もなく兄を討つことに一切の躊躇がない

ただ彼女からの観点から言えば正義の刃として振り下ろされる

その時、王族の将軍たちは自らの秘密が露呈した事に激しく狼狽し「あまがみ」へと向かって突進し迫ってきた

「あの歌姫を捕らえろ！偽りの情報を流す貴様は反逆者だ！王国を滅ぼす気か！」

彼らの焦りの叫びは、もはや恐怖と保身の声に過ぎない将軍の背後には動揺から立ち直り盲目的に従い王族に忠誠を誓う幾人かの兵士たちが続き

「あまがみ」を囲もうとする、しかし、その将軍たちの背後から

これまで指揮を執っていた一部の部隊が将軍たちに向かって剣を構え始めたのだ真実の過去と星の記憶による残像が彼らの心にも深く刻み込まれ臨界を超えた結果だった

「貴様ら王族の犬め！我々はもう騙されない！」

同じ旗のもとに立っていた軍人同士が互いに刃を向ける味方内部での反乱の狼煙が上がり衝突の最前線の混乱は最高潮に達し真相の幻影は不動の誓いの呪縛の鎖を断ち切り分断の業火を呼び覚ます

だが、その瞬間、将軍の動きは背後から飛来した虚空を裂く一筋の閃光によって止められた

「グアアアッ！」

将軍は絶叫し焼け爛れ、その場に崩れ落ちる光弾を射出させたのは謎の飛行船から降下してきた異形の兵士の一人だった彼らの眼差しは冷酷に王国側の鉄血の臣を射抜く彼らは王族側の人間を優先的に狙っているように見えた彼らの目的は

この戦乱に乗じて王族の権力そのものを排除し回収あるいは確保することにあるのだろうか

「リーネ」は、その光景を冷ややかな目で見つめていた「アッシュ」は「リーネ」へと肉薄し再び問いかける

「「リーネ」！あの者たちの目的は何だ！？お前はその全てを知っているのか！？」

「リーネ」は兄の切羽詰まった問いに一瞬だけ目を伏せ、そして告げた

「見ただろう兄上！彼らは真実の裁定者だ偽りを積み重ねた王国は滅びる運命にあるのだ！」

彼女の言葉その響きは神託のごとく重く、まるで新たな悲劇を予感させ「アッシュ」は驚愕した

その言葉が彼らの行動に明確な意志がある事を示唆している異能兵は

ただの怪物ではなかった彼は「リーネ」の言葉に揺れ動く自身の心を奮い立たせ

「あまがみ」を守るために異形兵士へと剣を向けた

「リーネ」の言葉と共に飛行船からはさらに多くの異形兵士が降下し合戦場は逃げ惑う国の盾たちと無慈悲に攻撃を仕掛ける異形兵士たちで溢れかえった退路は断たれ糸がもつれ理性の渦は極点に達し兵たちの心は粉々に砕け散る前途は暗澹たるものに呑まれつつあった

その時「あまがみ」は、これ以上の犠牲を出す事を恐れ目を閉じた王族の将軍が倒れる光景そして「リーネ」が口にした裁定者という言葉は胸の奥に新たな焦燥と恐怖と使命感が渦巻く

この混沌を収めなければ全てが終わってしまう彼女の音律は今やただ事実を見せるだけでなく人々の心に深く入り込み彼らの時の堆積そして将来への選択肢にまで影響を与える事ができる様に感じられた

「これ以上は……だめ……みんな耳を澄ませて……」

「あまがみ」は天に向かって深く息を吸い込み魂そのものを震わせるように決意の歌声を放った彼女の音色は今、特定の意図を乗せて歴史の断層に響き渡った

「希望の光よ闇を裂き照らせ失われた夢よいま蘇り取り戻せ～【聖歌セイクリッド・カンティクル ・レゾナンス〜開かれる・活路示す旋律〜】」

その歌声は単なる旋律ではなく、それは混乱する兵士たちの意識に記憶と未来を紡ぎ明確な退却路と生存への希望を直接的に描き出す

まるで天啓のごとく調べであり兵士たちは互いに目を見合わせて

まるで催眠術にかかったかの様に一斉に特定の方向へと撤退を開始し

それは軍律ではなく歌の意志による行軍

と秩序であり撤退とは言えず

まさに曲節が直接指示を与えている奇妙な光景だった

「あまがみ」の旋律は王族と古の魔族の盟約の幻影を

さらに鮮明にすると同時にその響きは飛行船から降り立つ異形兵士たちの動きを

僅かながら鈍らせた彼らの奇妙な結晶武器の輝きが一瞬だけ揺らぎ空間の歪みが不安定になる

それは吟唱が単なる精神的な影響だけでなく物理的な現象さらには異質の存在にまで干渉し始めた証拠だった

「アッシュ」は「あまがみ」の歌声が持つ新たな力に驚愕しながらも

それが兵士たちの命を救っている事を理解し新たな好機を見出す彼は自らの剣を振るい

「あまがみ」が作り出した退却路を守る盾となる

この時代の境目で生き残り「リーネ」の言う真実の全てを突き止め

そしてこの世界に本当の平和をもたらすために

「「リーネ」俺は君を救う！たとえ、どれほど残酷な真実でも共に立ち向かう！」

「アッシュ」の言葉は修羅場の喧騒に上書きされそうに

なりながらも「リーネ」の心に深く響いた彼女の冷徹な瞳の奥に一瞬だけ複雑な感情の光が宿る戦場は真実

裏切り裁定そして新たな力の覚醒が交錯する、まさに世界の運命を賭けた最終局面へと突入していた