【第2章:変なジジイにスカウトされる】

その現場を、サングラスに謎の和服という変な格好のジジイが目撃していた。

「ほほう…君、ボクシングをやってみないか?」

「え、どこ見てそう言ったんですか」


彼は滝沢タイガ会長(72)。

かつて世界戦のセコンドについていた、らしい。

今は潰れかけの「虎の穴ボクシングジム」の会長だ。


「強さだけじゃダメだ。運も実力のうちなんじゃよ」


僕は、なんとなく断る気力もなくて入会した。


すると…


・縄跳び中、たまたまひもが切れて跳ね返り、トレーナーのスマホに当たり壊す

・サンドバッグを殴ったら後ろの鏡が割れて、偶然ジムにいたゴキブリが気絶

・スパーリングでパンチを避けたら相手が滑って自滅


勝ってる。

勝ってしまっている。

何もしてないのに。

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