EP016:進め、ムカデル陸上艦隊!

 力自慢のムカデ型ムカデルが何十両もの車両をくっつけて夜明けの砂漠を突き進む。


 沿岸部の砂浜から内陸まで延々と続く灼熱の砂の地でも人とFBが生きている。


 ムカデルもその一つだ。


 長大なムカデ型は何十両という節を連結する。最大クラスのムカデルであれば「町が歩いている」と言われるほどだ。


 巨大なムカデルのなかでもフォート・ムカデルは強力なパワーをもつ。巨体に、ヤマアラシのように武装することで巨大な移動要塞が誕生した。


 この要塞は反乱軍の貴重な火力で、優秀な帝国軍部隊といえども迂闊には近づけない。


 もっとも今は反乱軍ではない。


 ただの傭兵組織の拠点なのだ。


 ムカデル艦隊は旗印を変えて活仕事中だ。


「帝国軍を発見!」


 見張り塔に立つ味方が言った。


 帝国軍外人部隊と武装勢力だ。


 戦況は武装勢力が不利。


 ムカデル艦隊は武装勢力の雇われだ。


 武装勢力はアルマジスーツの装備だ。


 歩兵FBよりも低い戦力だ。


 それが外人部隊のサル型モガモガに追いまわされる。敵であるモガモガに掴まれたアルマジスーツは地面に叩きつけられて破壊された。


「なんという残虐性だ!」


 ムカデルの潜望鏡で見ていた兵士が叫ぶ。


 味方のムカデルは苦戦する仲間を援護する。フォート・ムカデルが並べば、その場所はまたたくまに要塞地帯へと早変わりだ!


 逃げまどう武装勢力に夢中なモガモガ部隊は、ムカデルのキルゾーンに引き込まれた。


 フォート・ムカデルの巨砲弾が雨のように降り注ぐ。


 気がついたときはおそい!


 どんなFBもバラバラだ!


 そしてフォート・ムルガルの分厚い重装甲は帝国軍だって手出しが難しいぞ。


 モガモガのパイロットは怒り狂う。


 敵は帝国軍伝統の改造だ。


 敵はキラーバイトファングのある口を封じらているのに接近戦を挑む。


 キャノンをめくらに乱射うぃながらナックルウォークだ。


 狙いをつけていない攻撃など花火と一緒だ。


 花火ごときには帝国正規軍と戦ってきた兵士が驚くわけがない。


 モガモガ部隊は波止場に寄せる波飛沫のように砕けちった。


 要塞に無謀な正面突撃をかければ生き残れない。


 フォート・ムカデルの砲撃の余韻が轟く。


 フォート・ムカデルから照明弾があがる。


 見えるのは……敵だけだ。


 バラバラにされたモガモガの残骸だけだ。


 旧反乱軍仮設総司令部であるコマンド・ムカデルが信号をあげたのだ。コマンドもフォートも見た目は同じだが、違いがあるとすれば……『特別な客』の存在だ。

 

 陸上艦隊旗艦であるコマンド・ムカデルには、確かに反乱軍の総大将がいた。


 元々は帝国の皇帝の子の一人である。


 帝国内領の王国を任せられていたが、帝国の政策と、民への強い負担から立ち上がり、反乱軍を組織したのだ。


 最終目標は皇帝イシュバルの打倒!


「進路をメガロビア港へ!」


──次は、失敗しない。

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