EP003:驚愕!帝国新兵器を調査せよ!

 帝国軍はニーア大湿地帯で新兵器を投入した。


 帝国軍FBは一機、一機ががまるで要塞のように硬く、無数の大砲を装備しているのだ。


 それは帝国軍の伝統だ。


 反乱軍とは違うものだ。


 しかし、ニーア大湿地帯へと侵入した帝国軍のキャノンはとても速く、幾ら帝国軍よりは劣るとはいえ装甲を易々と貫通してくる。


 射撃戦になれば機械式弓が少数配備されている程度の反乱軍が勝てる見込みは低い。そして帝国軍は、そこを狙ってきた。


 反乱軍と帝国軍では技術力に差がある。


 これは間違いようのない事実そのもの。


 早急に帝国軍の実力を再評価しなければ!


 反乱軍総司令部ガンダラクシャ要塞──。


 調査部門では、帝国軍から鹵獲──と言っても残骸だ──回収した数々のサンプルを詳しく調べあげた。


 帝国軍の最新装備の数々に、テクノロジで劣っていると知っていてなお、反乱軍のブレインたちは驚く。


「ボアコンダ部隊を壊滅させたガリオニクスのキャノンは、重装甲のボアコンダを貫通するほどの能力があるのか」


 ボアコンダは、技術レベルが低い反乱軍にあっても、もっとも装甲が分厚いメカだ。


 主な戦場が湿地帯という環境なのでヘビ型のベースが、全身で重量を分散し浮かぶことができるからこそ可能な重装甲だった。


 しかしガリオニクスの装備する高速射キャノンに対しては、十分な防御能力が不足していることが判明した。


 どの方向からでも一撃でつらぬかれる。


 弾の装薬も化学的に最適化されている。


 でなければ砲身を長くはできないのだ。


 確かに、ガリオニクスがキャノンを発砲するためには、装填する人間や照準する人間など、余分に、大量の人間が必要だ。しかも高速機動中には攻撃の間隔が極端に長くなる弱点も判明している。


 だが……反乱軍が生産できない兵器だ。


 新型キャノンを装備して、帝国標準改造のガリオニクスの低すぎる闘争本能をおぎなっている。格闘戦は割り切って重装甲なのだろう。


 射撃戦での戦力比でいえば、メガデウムがガリオニクスと一対一で交戦した場合の勝率は二パーセントに過ぎない。メガデウムが勝利を掴むには、熟練戦士の決死の意思が必要だ。


 更に深刻な問題があるとすれば、投入されたばかりの最新機であるスネークイータだ。空を飛ぶので一方的に反乱軍は攻撃を受けてしまう。


「よし、撃て!」


 鹵獲した帝国軍の高速射キャノンを仮に装備したメガデウムが、試射する。


 弾は、帝国軍の装甲から剥がして作った射撃目標に命中するが、跳ね返されてしまった。


 応急改造された砲撃仕様のナマケモノ型カノンリウムの性能は不足気味のようだ。


 カノンリウムは、メガデウムが両腕に装備していたサンダーネイルを外し、代わりに単発のキャノンをネイル代わりに装備している。


 連発するために兵士を乗せることを嫌がるガンダラクシャの開発部門は、最もシンプルな答えで弾数を増やした。


 銃身と弾のセットを全身に装備するのだ。


 他にも、カノンリウムは背中にロケット砲を装備している。一二発のロケット弾の詰まった箱で、火力支援する。弾頭には、スネークイータの投下した不発弾をヒントにした対装甲弾だ。


 重装甲な帝国軍機があらわれたときには、カノンリウムを頼ることも増えるかもしれない。


 そんなことを考えながら、テストしている技術者は、カノンリウムにテストの終わりを伝える。


 反乱軍技術担当の苦労はたえない。


 なんとか反乱軍の技術で、帝国軍の技術を一部でも取り込むのが精一杯だ。


 高速射キャノンを連発する仕組みの試作品を作っても、維持も生産もできないので使い捨てを束ねるという苦肉の策なのである。


 ただ、意外にも反乱軍と帝国軍の技術に関する知識は同じ程度なのだ。


 違うものがあるとすれば、反乱軍が追放されている土地には工場や工作機械が不足していることだろう。


「高速射キャノンをコピーしたとて劣化している」


 ないよりはマシだし元より使い捨て。


 反乱軍メカが突撃するための支援には使えるだろう、と、量産して新武器になるだろ。


 幸い単純すぎて簡単に作れるし軽い。


 軽ければ軽いほど何かしら使える。


 技術者は低い志しで妥協していく。


 技術者が悩んでいると影が落ちた。


 試験場に巨大なFBがやってくる。


 大きさだけであれば、どんな反乱軍メカよりも巨大である──怪獣だ。


 アーケロン型ガミュラズだ。


 絶滅した古代種がクローニングで復元されるのは、ありふれた技術だが、大きい。


 規格外なほど、巨大なFBだ。


 戦えばとても強そうに見える!


 だが、そのガミュラズにはいっさいの武装が無いどころか、改造の手はまったく入っていない。


 資材や廃材を運ぶだけが仕事だ。


 ガミュラズでは帝国軍と戦えないのは常識だ。


 二本の巨大な足で直立歩行ができる、爪や噛みつきも必要十分な威力がある。


 だが……何よりも遅いのだ。


 ガミュラズは嫌われている。


 例外でガミュラズが好きな人間は、ガンダラクシャ要塞では宇宙部門くらいだろう。


 そんな時──。


 標的にされたガリオニクスから、パーツが落ちた。ちょうどパイロットが座るコクピットの部分だ。


 記録が保管されている部品だった。


 驚くべきことに、鹵獲したガリオニクスは帝国の機密情報をもっていた。最新兵器の記録をとるための特殊な仕様だったらしい。


 そして恐るべきことに──。


 操縦席からはまったく未知の新型についての情報を手に入れることができた。


「なんということだ!帝国軍めこたびの侵攻でどれほどの新兵器を投入するつもりなんだ!?」


 ガンダラクシャの技術者は戦慄を隠せない。


 帝国軍は新大型種の投入を目前にしている。


 だが…………。


「ウルニアの森に大型種など侵入不可能だ!」


 ガンダラクシャはこのミステリーな危機に対して、強い警戒心をいだくのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る