女王様のようなルイーズ

気付くと目を閉じていた。


「ルイーズ、ルイーズ、起きろ」


レウルスがルイーズを起こす。目を開けると、しかめっ面のレウルスが目の前にいた。


「う~ん、まさか私、寝ていたのかしら?」

「そうだ。帰ろう」

「アードルフとフローレンスは?」

「今、馬車の手配をしに行っている」

「そうなのね」


さっき、水を飲んだというのに酔いが一向に醒めなかった。身体も思うように動かせない。


(こういう時こそレウルスに甘えてもいいのかしら………)


「レウルス、抱っこ」


酔っているのもあって手を伸ばして子どものように甘えてみた。レウルスがギョッとした顔をする。普段なら絶対にしないが、ここはトリアで、解放されている時間なのだと思うと大胆になった。


「フローレンスにはいろいろと好きにさせたのに、私だとダメなの?」

「..........ルイーズは酒癖が悪かったのか」

「違うわ。ここに来て私なりに頑張っているから、思った以上に疲れていたみたい。だから、抱っこ」

「しっかりしたことを言う割にめちゃくちゃだな。馬車が来たら肩を貸してやるから」

「冷たい」

「オレは冷たくはないつもりだけどな」


言い合っているとアードルフが呼びにきた。


「馬車が来たぞー。ルイーズは酔いつぶれてるなあ」


立ち上がろうとしないルイーズを仕方なく、レウルスが抱っこする。


「あ、願いを聞いてくれたのね」

「大人しくしていろ」


馬車までルイーズを運んでくれた。馬車にルイーズを乗せると、レウルスが扉を締めようとする。ルイーズはそうはさせまいと腕を伸ばしてレウルスの胸元を掴んだ。


「なにをする!?」

「私をひとりで返すつもり?紳士なら最後まで送るべきだわ」

「この馬車はルイーズの家の馬車だし、オレがいなくても大丈夫だろう」

「そういうことではないわ。紳士たるもの...............ぶつぶつ」

「レウルス、僕が送って行こうか?」

「..........いや、出会ったばかりのお前よりもオレが送るのが筋だろう」


そう言うと、レウルスも馬車に乗り込んだ。


「じゃあ、またな~」


馬車が出発する。アードルフとフローレンスが楽しそうに手を振っていた。


「レウルス、私をしっかりと送り届けるのよ」


ルイーズはそう言うと、レウルスに寄りかかった。


「...............送るべきだろうとは思ったが、からまれると思ったからしなかったんだ」

「からんでない」


ルイーズがレウルスに寄りかかったまま馬車は進んで行く。


「レウルス、怒ってる?」

「怒ってないが、少し困ってる」

「.............私、こういう機会でもないと人に甘えられないもの」

「............」


レウルスが黙り込む。肉付きの良いレウルスに寄りかかると、クッションみたいで心地が良かった。


「レウルスって暖かい」

「オレで暖をとるな」

「楽しいわ」

「...........」


もはやレウルスはなにも言い返さなかった。


「おい、屋敷に着いたぞ。起きろ」


レウルスに起こされた。とっても眠いしフワフワしている。


「レウルスが抱っこして屋敷まで運んで」

「なに!?」


そのままルイーズだけ降ろそうとするからレウルスに抱きついた。


「こら!離れろ!」

「失礼よ!私を誰だと思っているの?公爵令嬢よ!屋敷まで私を抱っこして運びなさい!」


レウルスが思ったように動かないのでつい、上位貴族の特権を活かして命令する。


「こういう時に言うなど............ぐぐ」


真面目なレウルスはしっかりと命令に従ってくれた。


「そのまま私を部屋まで運ぶのよ」


抱っこされながら囁くと、焦ったレウルスは応対に出た屋敷の者にすぐにルイーズを引き渡した。


「あ、私の命令に背くつもり?レウルスを返さないで!彼はここに泊まるのよ!」


めちゃくちゃなことを言っている気はしたが、半分夢見心地でどうでも良い気分だった。


いろいろと言って疲れを感じた時、いつの間にか記憶が途切れていた。


……………次の朝、痛む頭を抱えて起きると、ジーナから昨晩の失態を聞いた。


「お嬢様……さすがにこういうことはもうなさらないで欲しいのですが。旦那様たちになんと言えば良いのですか!?」

「私がそんなことを言っていたなんて未だに信じられないわ」

「お嬢様はどうやら酒癖が悪いみたいですね。もう、あまり飲んではいけませんよ」

「確かに...........」

「食堂にレウルスがいらっしゃいます。挨拶された方が良いのではありませんか?」


どうやら無理やり泊まらされたレウルスは朝食を食べているらしい。


慌ててジーナに手伝ってもらって身だしなみを整えると、急いで食堂へと行く。食堂にはコーヒーを飲むレウルスがいた。彼と目が合う。


「レウルス.......!」

「起きたか」

「あの、あの!私がレウルスをここに泊まるように言ったんですってね」

「それどころじゃないぞ。覚えてるか?」


ブンブンと頭を振った。思い出してきていたが、恥ずかしいので忘れたことにした。


「昨晩は、オレにいろいろと命令をしていたぞ」

「..............忘れて欲しいわ」

「もう酒は飲むな」

「はい........」

「落ち込むな。オレもそれほど困ったわけじゃないから...........。それより朝食を食べろよ」

「ええ」


レウルスに言われて席につく。


「あの………覚えていないのだけど、いろいろと申し訳なかったわ。良ければ今日は休日だし、レウルスに謝意を表す時間が欲しいのだけど.........」

「いいよ。それより練習しないと」

「で、でも!必要な物もまだ揃えていないでしょう?レイニーさんに聞いているわ」

「レイニーが?」

「……ええ。あいつはズボラだから宜しくって言われたし」


ふう、とレウルスはタメ息をついたのだった。

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