第10話 大きな主語=対象物を述べる者たちの末路

第9話 失われた「一生懸命」

https://kakuyomu.jp/works/16818792437602322701/episodes/822139838833721320


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 先日、こんな文章を書いた。題して「失われた「一生懸命」」。

 この言葉がこの数十年来、と言ってもこれまでおおむね30年かそこらの間なのだが、気が付けば、使われる機会が激減したように思えていたから、一つ問いかけをしてみようと思った次第であった。

 それはなぜなのか。

 幸いにも、コメント欄で教えてくださった方がいたので、御紹介する。


>一所懸命は、所領を守り抜く鎌倉武士の魂が感じられましたが、

たしかに一生懸命は、その字面のわりに抽象的で主観じみてて、尺度もバラバラですねぇ。

 江口たくや【新三国志連載中】様より


 なるほど! 私が着目せざるを得なかったのは、ここ。


 「字面の割に抽象的で主観じみてて、尺度もバラバラ」


 まさにこのお言葉につきますね。所領を守り抜く、というと鎌倉武士に限定されますし、実際そこから来た言葉であることは言われている通りなのですが、これを敢えて主語を広げて「何かを守り抜こうという魂を持ち日々生きる者」という見立てにすれば、それは立派な人だと思ってももらえましょう。時代や場所や状況を問わず通用する諺として、今に残るだけのことはあるといえます。


 そこで何を考えたのか、何かの言い訳のフレーズとして「一生懸命」などとのたまいだす人間がいつ頃か表われ、増えた。まさにこれはグレシャムの

「悪貨は良貨を駆逐する」

を地でいく結果になろうもの。

 元司法試験予備校講師で現在ある法科大学院の教授をされている弁護士の先輩はかつて予備校講師時代、その司法試験の勉強方法に絡み、


「自己流で一所懸命書いても落書きをしているだけのこと」


みたいな文章を書かれていました。

 この先輩の合格する答案の書き方云々についてはここでは詳しく述べませんが、要は、試験の本質を知らずに無駄に自分の頭で考えても無駄だということ。

 そんなところで「一所懸命」になっても仕方ないよ、ってことですが、こんなのまさに「一生懸命」の典型だと言われても仕方ないところ、武士の情けをお持ちなのか「一所懸命」と書かれていて、さすがだなと思ったことがありました。


 さてさてくだんの「一生懸命」って単語、まさに、字面は本来の言葉よりも一見尊くすばらしく見え聞こえはするものの、確かにご指摘の通り、客観的にこれという尺度も何もあったものではなく、本人の主観=やる気アピールの出来損ないでしかないということにしかならんわな。


 そんな言葉でも、なぜかありがたがる手合いは、結構多かったなぁ。

 「社会が悪い」とか「政治が悪い」とか何とか、そういう言葉を多用してテメエらの出来損ないの能書をトレースして社会を変えよう、学校を変えていこうよなどとこれまた甘言にすらならない戯言をホザいていた昭和末期の左翼筋とも付合いがあったのですが、これと同じパターンではないかな。

 もう一つ。何か対応策の一つも出せない無能がよくホザいていたっけな。

「人間としてよければ」

とか何とか。これもそうだ。問題に対する解決能力は愚かにしておろか、対応能力の一つもない者がこういうことをホザいてさも自分は物事をそれこそ「一生懸命」考えようと頑張っていますって言わんばかりに、今素敵なアピールをする次第。


 要は、主語が必要以上に大きい、ってこと。

 主語が大きくなれば大きくなるほど、その主語への対象があいまいになる。さすれば一見誰にでも通用するように思えるのだが、ことはそんな甘くないわ。あいまいになればなるほど、何となくの雰囲気で甘っちょろさを通り越した害悪をもたらす結果になるのがオチってところだぜ。


 というわけで、そんな手合いの末路はというと、以下の通り。

 先ほどの団体は全盛期の10分の1もあるかな以下の勢力に落ちぶれ、その団体を導くとかいう政党もまた、勢力絶賛激減中。その政党に関係のない個人レベルの人たちについては、まあ、私が大学に入った時点でも減りかかっていたが、私が大学を卒業した頃から一気にその縁が薄くそして切れていきましたね。


 イットキは相手にされても、そういう主語の大きい系の人間は相手にされなくなって終わり、あとはテメエらで傷のなめ合いよろしくデモでもして街中を群れてうろつくくらいが精いっぱいってところでしょうよ。

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