第3話 海老が出た! 海老と話した!

 なんか知らんが、海老が出された。無論、食用であり調理済である。

 海老の身をつまんで、食べました。


 そこまでは、よかった。問題は、ここからである。

 そのさほど大きくない海老2尾の頭を、横に置いていた。するとどういうわけだかその海老たち、すごい表情をし出したのよ。もの悲しげな、何か私に求めているような。どうやら、水槽に入れてほしいと言っているようだった。しょうがないから、小さな水槽を持ってきて石を敷いて水を入れて、それで彼らをそこに入れてやったのよ。2尾とも、えらく喜んでくれたわ。そのうちどういうわけか、彼等、私が食べる前の状態に戻っていたのね、気づくと。なんか、私もうれしかった。

 しかし、こんなことになったら餌もいるだろうと思って尋ねると、そこらの金魚らにやるみたいなのでいいと言う。ならばということで買ってきて、与えました。

 普通に美味そうにつまんでいたね、彼ら。

 そうこうしていると、目が覚めそうになった。でもって食卓に戻ると、今度は大きな伊勢海老の身をいただくことに。それでさっそく食したところ、ほどなく、目が覚めました。なんか、腹が膨れた心地がしていたね、目覚めても。

 あれは、いったい何だったのだろう。ま、いいか。

 そんなことを思って、毛布を掛けなおしてごろり。

 さっきの海老にまた会った。聞くと、その海老2尾は男女のつがいだったみたいである。ここに卵が出て沢山稚魚が出たらどないしよと思っていると、そんなことはいいからもう起きて活動しなよと言われた。


 果たして目覚めると、夜が明けかかっていた。目覚まし時計を見ると、確かにもう朝6時を回っていた。10月初旬なので、もうそれなりに明るくなっている。これがもう2カ月もすれば、まだ真っ暗だろうけどな。

 ま、でもいいか。お先真っ暗ってわけでもないからね。


 しかし、海老と対話したのは、生れて初めてだぜ。数カ月前はティラノサウルスと対話してヘルマン・ヘッセの文体が云々という話になったこともあったけど、あの時以来かな、こちらの知らない動物とかれこれ話したのは。

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