第10話「世代の壁はウィッグより高かった」

後楽園イベントの翌月。

すみれとまどかは「次も合わせやろう!」と盛り上がり、再び会場へ。


更衣室で準備していたら、隣の席に若い女の子たちが座った。

ピンクのウィッグ、キラキラの衣装、そして――メイクが早い!





「下地どこの?」

すみれが勇気を出して聞くと、返ってきたのは衝撃の一言。


「え、フィルターで盛るから下地とか適当でいいんですよ~」





「ふ、フィルター前提!?」

思わずすみれとまどかは顔を見合わせた。


二人にとっては「撮影=写ルンです時代」。

光の加減と角度でどうにかするのが当たり前だった。

「加工ありき」って発想に世代差を感じすぎて、軽くめまい。





さらに雑談が続く。


若いレイヤー「私たち、この前“0次会”でTikTokライブしてから会場入りしたんですよ~」

まどか「ゼロジカイ?……え、私たち、朝は店でしゃけ定食べてから来たけど?」

(そこ比較する?)


若いレイヤー「推し活資金はスパチャで稼いでます!」

すみれ「……派遣の更新を祈ってる私って一体」





でも、撮影が始まると不思議だった。

若い子たちは元気いっぱいで、ポーズも流行りのハートやウィンクばかり。

一方すみれとまどかは、戦闘ポーズと睨み。


並んだ写真を見ると――

世代の違いが一目瞭然。

でも、そのギャップが妙に面白くて、笑えてきた。





帰り道。

まどかさんが笑いながら言った。


「世代も価値観もバラバラだけどさ……コスプレ好きって気持ちは一緒だね」


すみれも頷いた。

「うん。むしろ違いがあるから面白いのかも」





電車の窓に映る自分。

10代の頃は「痛い」って言われて泣いたけど、

今は「痛くてもいいじゃん」って思える。


仲間もできたし、笑い飛ばせる自分もいる。

コスプレを通じて、世代を超えた青春を生きてるんだ。




つづく



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る