第4話 「宅コス修行、なぜ私はダルシムになったのか。」

無花果様の写真を見て3日。

すみれは決意した。


「次は、自力でやる。」





サロンでやってもらった時は、確かに完璧だった。

でも、あれはプロの手。

自分でやれなきゃ、外に出る勇気もつかない。

……という謎理論がまた発動。





ターゲットキャラは「強くて華やか」な架空の戦闘系美女。

参考資料をプリントアウトし、ウィッグ(安物)とメイク道具(ほぼ100均)を用意。


YouTubeで「強い女 コスプレ メイク」と検索して練習開始。





1時間後。


鏡の前には――


インドの格闘僧侶ダルシム※みたいな顔面が完成していた。

(※ストリートファイター参照)





「なんで!?私、戦うヒロイン作ってたよね!?」


金色のアイシャドウは発色が強すぎて額まで侵食。

赤いリップは口から2ミリはみ出してる。

しかもウィッグの前髪は浮きすぎて、額全開。

合わせ鏡で見たら、完全に格ゲーのステージBGMが聞こえた。





「……ヨガフレイム……」


思わず口から出る必殺技。

ああ、私の戦う女、方向性が違う。





でも、ダルシム顔のままポーズを取ってみた。

拳を握って腰を落とす。

……意外と悪くない。

いや、悪いけど、なんか強そうには見える。





写真を撮ってスマホで確認。

確かに無花果様とは真逆のジャンルだけど、

「これはこれでアリかもしれん」という謎の達成感が生まれる。





そうだ。

可愛くなくても、華やかじゃなくても、

変身するってことは、やっぱり楽しい。





この日から私のカメラロールには、

無花果様の横にダルシムすみれが並ぶようになった。





次の目標は――

「ダルシムを経由せず、ちゃんと戦うヒロインになること」。


まずはアイシャドウの塗布範囲から修行し直そう。





つづく

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