第12話 ルル·ドッペル登場です!
「いやぁ~ミディアが追放になったってことは私の身も危ないと思って逃げてきちゃった! ワハハ」
「ルルちゃん……相変わらず破天荒だね」
「失敬な!」
倒れていたのはルル·ドッペル……ルル博士と呼ばれるドッペルゲンガー族を祖先に持つ眼鏡をかけ、おかっぱの赤い頭をして、悪魔の様な尻尾を持つ綺麗な女性……それがルルちゃんである。
私とは幼馴染の関係で、私が権力を握っている間はパトロンとして色々な研究をさせていた。
「で、私の追放先に来たってことは研究凍結でもされた?」
「いやいや、ミディアが追放処分を受けたって事は結構危ない研究をしていた私も実態が知られれば研究凍結は勿論、運悪ければ逮捕されてしまうからね。ワハハ」
彼女のしていた研究はモンスターについてだったが、錬金術も精通していた。
そして彼女のしていた研究の1つにモンスターを魔族に進化させるというのがあった。
元々魔族はモンスターから進化したというのが一般論であり、モンスター同士から稀に魔族が生まれる事や、モンスターと魔族のハーフから下級魔族が生まれたりと、このメカニズムを解析し、モンスターを魔族に進化させれば問題になっている魔族の人口問題に解決するのではないかと研究をしていた。
ただこれ、錬金術では禁忌の人体錬成に通じる技術となっており、魔族の間でも人工的に魔族を作るのはモンスターと魔族の関係性を破壊してしまうのではないかと前々から危険視されていたのである。
それに親衛隊長が自然的にモンスター同士の両親から生まれた魔族だったので、ルルの研究を度々妨害しては、私の権限で実験凍結を防ぐというのを繰り返していた。
私の追放で政局のパワーバランスが崩れた為に、身の危険を感じで、ルルは実験の成果物を持って逃げたのだとか。
「ワハハ、親友であるミディアが僻地に飛ばされたとなれば、私もそこに逃げれば少なくとも邪険には扱われないと思ったからね! 親父の所に逃げれば誰かと結婚させられるかもしれないし」
ルルは背が高くてモデルの様な美人なのであるが、禁忌を研究しているのと同性愛が酷すぎて結婚は度々断っていた。
「それにミディアの周りは色々起こるから退屈しないと思ってね! ただ想像よりも僻地過ぎて、疲労で倒れるとは……」
「研究のしすぎで体を鍛えてなかったツケだよ」
「ワハハ、ぐうの音も出ない……」
とりあえず砦に案内して、食事を食べさせるのであった。
「いやぁ~満腹満腹! 2日ぶりの食事だったよ!」
「四天王の娘が餓死していたなんて知られたら四天王の権威が傷つくでしょ……」
「それはそうだな! ワハハ」
乾いた笑いをするが、そろそろ本題に入ろう。
「で、私も今は権力を失っているからろくに研究施設の提供は出来ないよ?」
「それは勿論分かっている。だから研究資材はちゃんと持ってきた」
ルルは背負っていた箱のスイッチを押すと、パカパカと開いていき、それが膨らんで巨大なカプセルを縦置きしたような装置が現れた。
「じゃじゃーん! モンスター合体装置!」
「モンスター合体装置?」
「そそ、モンスターを交配すると稀に魔族が生まれることに着目して、モンスター同士を合体させることで強制的に魔族を生み出す装置だよ! ワハハ」
「それ、モンスター側の自我ってどうなるの?」
「さあ? ワハハ」
「さぁって……」
実験はしていたらしいが、どうやらまだ装置は未完成で、モンスターの合体には成功するらしいが、ゲテモノが出来上がったり、自我が合わさって自殺してしまったりと碌な成果が出てないらしい。
「組み合わせが悪いからだと思ってるんだよね。組み合わせが良ければちゃんと魔族が生まれると計算ではなってるんだけど……」
まぁ、ちょうどダンジョンもあるし、やれるだけやってみたらという風に私はルルに、私の作ったダンジョンを紹介するのだった。
「ルル様ってだいぶ頭のネジが壊れている方っすね」
「まぁね」
ダンジョンがあると聞いたルルはワハハと言いながら早速潜っていってしまった。
行動力は見習うべきか……。
私達は私達で魔法の鍛錬をしていると、夕方……ルルと体格が良い魔族の男性を引き連れてきた。
「やったよ! 成功だよ! ここは素晴らしい材料が揃っているね!」
と、興奮気味に話す。
事情を聞くと、ルルは黄金スライムに目をつけて、成分を調べ、黄金スライムを素材に使って、メインに他のモンスターを混ぜれば魔族が作れるのではないかと思い、2階層のホブゴブリンを連れてきて黄金スライムと合体させたらしい。
結果、魔族に分類されるオーガにホブゴブリンは生まれ変わったらしい。
「これは素晴らしい発明ですよ! 俺の仲間達も是非オーガに進化させてください!」
オーガのオニマル君(私が名付けた)も是非仲間のホブゴブリンもオーガにして欲しいと懇願し、仲間達の説得は任せて欲しいって言っている。
「ミディアも手駒として使える魔族は欲しいでしょ」
「それはそうだけど……一気に増やされると食料が間に合わないからあと5人くらいにしておいてよ」
「うんうん! わかったわかった! ワハハ」
絶対に分かってないと思うが、とりあえずオニマルの為に寝る場所を作ってあげるのだった。
結局ルルは私が提示した人数限界の5人を作り出して
「もっと! もっと研究したい」
と駄々をこねていたが、衣服も足りなくなってきているし、食料もゴーレム農園の収穫が上手くいかなかったらまずいことになる。
なので、ルルを必死に宥めて、勘弁してもらってオーガの製作をストップしてもらった。
「でも普通のスライムだと上手くいかなかったのに、黄金スライムを使いだしてから全部成功……いや、ホブゴブリンを使っているのもあるからかな?」
研究熱心なルルはあちこちに図面を広げて、実験はしないが理論の構築のための研究は続けている。
それと全員を砦に住まわせることはできないので、オーガ達には私が作ったレンガ造りの家に住んでもらっている。
「俺達元々ゴブリンですよ! ダンジョンの中でも寝れるんでそこまで気にしなくてもいいですって」
とオーガ達は言うが、彼らがこちらに友好的に接してくれているし、私が使う魔法を覚えてみたいと興味を示してくれるので、ついつい優しくしてしまう。
それに私の場合、魔王軍が崩壊したらダンジョンに籠もるしか無いので、少しでも戦力になりそうな人は囲い込みたいってのもある。
なのでオーガ達にもレベリングと魔力の種を沢山食べてもらい、魔法が使えるだけのMPを確保したのであった。
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