君と距離が縮まる

 次の日から授業が始まった。


 確かに君野さんと話す時間はあったが、仲を深められるようなことは話せなかった…。

 だが僕は初めて君野さんと会った時よりは緊張しなくなった。


 美人は3日で飽きるというが全然そんなことはない。


 とある日の昼休みに僕は蓮とお弁当を食べながら話した。


「君野と仲良くなった?」


「後ろから見て分かるだろ、全然ダメだよ…。」


「実は俺、隣の工藤と仲良くなったんだぜ!」


「へぇー、良かったな。」


「どうやら工藤、君野の幼馴染らしいんだよ。」


「マジかよ!」


「君野の名前について聞いてみたんだよ。でも答えたくないみたいなんだよな…。知ってるはずなのに。」


「何か事情がある感じか…。」


「あと工藤が君野を琴ちゃんって呼んでたぞ!」


「名前が琴なのかな?」


「うーん、あだ名の可能性もあるし、本人の前で呼ぶのはやめとけよ!」


「はーい。」


 僕は次の日から君野さんと仲良くなるために授業以外でも話した。

 だが、あまり効果はなかった。


 一ヶ月後に転機が訪れた。


 学年レクが行われることになった。男子はサッカー、女子はバスケ、男女混合でドッジボールをやることになった。


 この中のどれかを一つ選ばなくてはいけなかったので僕はドッジボールを選ぶことにした。


 本当は蓮もドッジボールにするはずだったが、元サッカー部だったらしいくてサッカーの方に連れて行かれてしまった…。


「蓮、元サッカー部だったんだ!」


「そうだぜ、一緒にドッジボールやれなくてごめんな。」


「大丈夫、一人でも何とかなるよ。」


「あっ、そういえばドッジボールって男女混合だよな?」


「うん。そうだけど、それがどうしたの?」


「工藤から聞いたんだけど、君野もドッジボールやるらしいんだよ。」


「そうなの!仲良くなるチャンスだ!」 


「頑張れよ!」


 それにしても蓮、工藤さんと仲いいのかな?

 さっき決めたことをすぐに話すなんで蓮のコミュ力が高いんだろうな…。


 学年レク当日


 僕は早々に死にかけていた。


「うわー!」


 相手チームの投げたボールがずっと僕に当たりそうになっている。というか狙われている気がする。


 投げているのは女子だけど球がすごい速いし、それを外野が受ける時の音がとても痛そうだ…。


 当たったら絶対に痛いから当たりたくない!


「痛っ…。」


 そんなことを思ってたら当たった。思っていたよりも全然痛い…。


 次は君野さんが狙われているみたいだ。でも、僕みたいに必死で避けているのではなく、余裕で避けているし、キャッチもしている。 


 すごくかっこいい!


 そんな調子で君野さんの活躍で僕以外の人は犠牲にならずに勝つことができた。


 僕は試合が終わった後に嬉々として君野さんに話しかけた。


「君野さん!すごい活躍だったね!」 


「ドッジボールは得意だから。」


「そうなんだ。良かったら一緒にバスケの試合を見に行かない?」 


「うん。行く。」


 僕は君野さんを誘ってバスケの試合を見ることに成功した。


 このチャンスを逃すまいとバスケの試合を見ながら君野さんに話しかけた。


「工藤さんと幼馴染って聞いたんだけど本当?」


「うん。私のことが心配だからこの学校に一緒に来てくれたの。」


「そっかー。僕の幼馴染は違う高校に行っちゃったんだ。」


「私、中学の同級生と同じ高校に入るのが嫌でここに来たの。」


「僕は行ける学校がここしかなかったというか…。勉強があんまり得意じゃなくて近いところで何とかここにこれた感じ。」


「私は遠いところならどこでもよかった。でも近いところならもっといいところに行けたかも。」


「じゃあ、結構頭いいんだ!良かったら勉強教えてよ。」


「いいよ。時間があったらね。」


「数学のあの計算がわからないんだよね…。最近習ったやつ。」


「ああ、それは公式を覚えておいてそのままその式に入れて計算すればいいんだよ。」


「そうなんだ!あとは前の単元のあの計算も…。」


 僕達はバスケの試合を見るのを忘れて話し合った。とても楽しい時間だった!


 そういえば、蓮のサッカーの試合を見に行くと約束してた気がするがまぁいいか…。


 教室に戻ると蓮に話しかけられた。


「碧、俺の試合見に来てくれなかったよな…。」


「ごめん。完全に忘れてた…。」


「それより、君野との仲はどうなった?」


「休み時間に勉強を教えてもらうことになった!」


「おお、良かったな!」


「それにしても、今日は何でいっぱい話してくれたんだろう?」


 いつもなら一言話すだけですぐに離れていってしまうのに…。


「工藤によると君のは二人きりの方がよくしゃべるらしい。」


「僕も同じだよ。周りに人がいるとなんか緊張して話せなくなるんだよね…。」


「じゃあ、休み時間の時に二人の周りに人が行かないようにしてやるよ!」 


「ありがとう!これでもっと君野さんと仲良くなっちゃうぞ!」


 こうして次の日から休み時間に君野さんと勉強ができるようになった。


 次の日


 僕は朝早くに学校に来て、君野さんに数学の分からない問題を聞きに行った。


 教室に入ると君野さんが暇そうに窓の外の景色を眺めていた。


「おはよう!君野さん!」


「おはよう。」


 君野さんは無表情だが、僕の方を見て挨拶を返してくれた。


 日の光を浴びて輝く君野さんは女神のような美しさだ。


 あまりの美しさに見惚れていると、君野さんは不思議そうに首を傾げていた。


「どうかしたの?」


「いや、何でもないよ!それより勉強を教えてもらいたいんだけど!」 


 君野さんの美しさに見惚れてたと正直に言うと、ヤバい奴だと思われそうなので誤魔化した。


「わかった。どの教科がわからないの?」 


「えっと、数学の最近やったところなんだけど…。」 


 僕はノートを取り出して、わからない問題を指さした。


 君野さんは僕の隣に座り、ノートに顔を近づける。 


 自然と距離が近くなり、心臓が高鳴る。


「この問題は…。」 


 君野さんはとても分かりやすく、丁寧に説明してくれた。


 僕はその説明を受けて、理解できているか問題を解いてみた。


「えっと、ここはこうして…。」


 あっ、書き間違えちゃった。 

 消しゴム取らないと…。


 僕が近くにあった消しゴムに手を伸ばしたのと同時に、君野さんも手を伸ばし、僕たちの手が触れた。


「あっ、ごめん!君野さん!」


 君野さんはすぐに手を引っ込めてしまった。


 多分、君野さんは僕の間違えに気づいて消しゴムを取ろうとしてくれたのだろう…。


「大丈夫だよ。」 


 君野さんは下を向いてしまい、勉強をするなんて雰囲気じゃなくなってしまった…。 


 僕はこの雰囲気を変えるために質問をした。 


「君野さん。好きなもの何?」


 君野さんは目を大きくして驚いた様子だ。 


「僕が好きなのはメロンパン!本物のメロンみたいな味がしない、偽物のメロンパンが好き!」 


「そうなんだ。私は麩菓子ふがしが好き。」


「ふがしって何?」 


「麩菓子はね…。」


 僕たちは朝のSHRが始まるまで、好きな食べ物について語り合った。


 次の日も最初は勉強をしていたが、だんだんと好きな飲み物の話になり、1週間が経つと勉強の話はほとんどしなくなっていった。


「最初は勉強するために朝、集まってたのにどんどんそれ以外の話だけになったね!」


「そうだね。でも楽しいから良いと思う!」


 君野さんも段々と僕に心を開いたのか、笑顔を見せてくれるようになった。


「小テストの結果、ひどかったんだけど…。君野さんはどうだった?」


「私は満点だったよ。学校だと勉強以外のことを話しちゃうから、連絡先を交換して分からないところがあったら連絡するようにしようか。」


 こうして僕は君野さんの連絡先も交換することに成功して、成績もぐんぐん上がっていった。


 次に転機が訪れたのは夏休みだった。






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