西土まなの恋愛話
@waaaa126
第1話
夏の終わり、まなは智樹と付き合うことになった。
告白は、智樹の方からだった。少しぎこちなくて、でも誠実だった。
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智樹:「俺、お前のこと好きなんだ。前からずっと」
まな:「……ほんとに? うれしい、よろしくね」
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教室ではからかわれたり、友達に冷やかされたり。
でもまなは笑って答えていた。
「なんだか不思議だよね、私が誰かの“彼女”になるなんて」
まなにとって、誰かに“選ばれる”感覚は新鮮だった。
でも、それと同時に、自分が“何かを選ばれていない”という感覚も、奥底に残っていた。
秋に近づくにつれて、まなと智樹の関係には、微かなズレが生まれ始める。
智樹はまじめで、優しいけれど、不器用だった。
まなはその不器用さが好きだったけれど、最近はちょっとだけ寂しい。
まな、モノローグ
たとえば、手をつなぐこと。
たとえば、悩みを話すこと。
たとえば、私の笑顔の意味に気づいてくれること。
その頃、まなは湊と偶然2人きりになることが何度かあった。
湊は相変わらず無愛想で、でも不思議な優しさがあった。
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湊:「……智樹のこと、ちゃんと話せよ。お前、溜めるタイプだろ」
まな:「え、なんでわかるの?」
湊:「……お前、よく笑うくせに、目が笑ってねーときあるから」
合唱祭直前、まなは智樹に別れを告げた。
ちゃんと好きだった。ちゃんと嬉しかった。
でもそれ以上に、何かが欠けていた。
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まな:「ごめんね。私、ちゃんと気持ちを言えなかった。でも、もう……無理して“彼女”してる気がして」
智樹:「……そっか。俺も、なんとなく気づいてた。ごめん」
別れは静かだった。悲しいけど、どこか晴れやかでもあった。
それは、“ちゃんと自分の気持ちで選んだ”という証だった。
教室に戻ると、湊が廊下からこちらを見ていた。
言葉はなかったけど、目が合ったとき、まなは不思議と泣きそうになった。
まな、モノローグ
私の優しさは、ちゃんと届いてたのかな。
誰かを好きになるって、難しい。
でも、笑えるように、また一歩ずつ――
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