AIと転生して異世界『最適』攻略〜犠牲ゼロは、神のお気に召さなかったようです〜

栗田雅樹

プロローグ

遺跡の最奥で、俺たちは一つの扉に辿り着いた。


分厚い石板を組み合わせた頑丈な扉。表面には摩耗した紋様が刻まれ、中央には幾何学模様の円形装置がはめ込まれている。その中心にある手のひらほどのくぼみが、淡く青い光を放っていた。


この先にいる「何か」が、すべてを壊してしまう。

直前に見つけた記録映像——そこに映っていた女性の悲痛な警告が、リフレインのように脳裏をよぎる。


そのとき、頭の中に機械的な声が響いた。


《マスター。扉の先には、重大な分岐ポイントが存在します》


「分岐?」


《この先の選択によって、想定される結末が変化します。事前に『ネタバレ』を希望しますか》


人生でそんなことを聞かれる日が来るとは思わなかった。


「ネタバレって……お前な」


《いわゆるルート分岐です。ネタバレにより、マスターが望む結末を選択できる可能性があります》


俺は小さく息を吐いた。


「見るに決まってるだろ。俺はゲームでも攻略サイトを見てから進めるタイプだ」

一度きりの人生で、わざわざ失敗ルートを選ぶ理由はない。


《了解。ルート分岐を提示します》


声のトーンが、わずかに硬くなる。


《この扉を開かない場合、想定されるのは『ノーマルルート』。この事態は解決に至りません。扉を開けた場合――『バッドルート』『グッドルート』『トゥルールート』の三つの可能性があります》


「おいおい、なんでバッドが一番最初なんだよ……」


《確率順です》


その言葉にムカつきながらも、『トゥルールート』――その言葉だけが、妙に心に残った。


「なあ」

《はい》


「最後の『トゥルールート』ってやつ、犠牲は?」


一瞬の沈黙があった。


《犠牲はありません。それゆえのトゥルールートです》


「……なるほど」


俺は扉を見つめた。ここから先は、選択の問題だ。まあ、トゥルールートを選ぶに決まってるんだけどな。


《最終確認です、マスター。この先に進みますか?》


「開けよう。その先に何があるか、見てみたい」


俺たちはただ、最適解を選んだだけだった。その選択が、この世界を造った「神」の機嫌を損ねることになるとは、この時の俺はまだ、知る由もなかった。

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