第5話 物語の終焉:静かな日常、そして永遠の旅

リオは、ミリアとアゼリアと共に、久留米の街で静かに暮らし始めた。彼は、もはや「世界を救った英雄」として称賛されることもなく、ただ一人の人間として、穏やかな日々を送っていた。

朝は、ミリアが淹れてくれる温かいコーヒーの香りで目覚め、昼は、アゼリアと共に読書をしたり、世界の新たな理について語り合ったりする。夜は、三人で食卓を囲み、今日の出来事を話す。


彼の「静かに暮らしたい」という願いは、まさに実現されていた。しかし、それは、決して「何もしない」ことではなかった。世界の管理者の力を得た彼は、目に見えない形で、世界の調律を行い、新たな歪みが生まれないように見守っていた。時には、二人のために、彼らの故郷へと次元を越えて旅をすることもあった。


ある日の午後、久留米の筑後川のほとり。リオは、ミリアとアゼリアと共に、夕日を眺めていた。川面には、太陽の光が反射し、キラキラと輝いている。


「ねえ、リオ。本当に、この世界は平和になったんだね」


ミリアが、リオの肩に頭を預けながら、幸せそうに微笑んだ。その身体からは、甘く清らかな香りが、夕日の光と混じり合う。


「はい。全ては、リオさんの力と、あなたの優しさのおかげです」


アゼリアが、リオの隣に座り、静かに言った。彼女の瞳は、夕日の光を映し出し、揺るぎない愛が宿っていた。彼女の顔からは、インクと、微量のオゾン、そして研ぎ澄まされた知性が、夕日の温かさの中で穏やかに漂う。


リオは、二人の手をそっと握りしめた。彼の心臓が「ドクン、ドクン」と穏やかに脈打つ。それは、もう恐怖や悲しみからくるものではなく、ただ純粋な幸福と、愛する人々との穏やかな日常への感謝の鼓動だった。口の中に広がるのは、久留米のあの穏やかな夕暮れの空の味。それは、彼の求めていた「静かな日常」の味だった。


かつて、彼は一人で世界を救う力を手にした。しかし、今、彼の隣には、かけがえのない二人がいる。そして、彼らがいるからこそ、リオの「静かに暮らしたい」という願いは、真の意味で叶えられたのだ。


彼らの物語は、終わりを告げた。しかし、それは、新たな旅の始まりでもあった。世界の創造主、そして管理者となったリオは、愛する二人の隣で、これからも永遠に、静かで、そして途方もない旅を続けていくのだろう。


彼らの物語に、終わりはない。それは、まるで久留米の筑後川の流れのように、どこまでも穏やかに、そして永遠に続いていく。


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進化ガチャで職業無限強化!引くたび世界最強になってすまない すぎやま よういち @sugi7862147

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