第36話 坂出さんと雑談を

「ふぁ〜!」

「なんだ寝不足か?」

「まぁな」


休み時間に思わず欠伸が出てしまったのだが友人が言う通り俺は寝不足だった。


「あれか?また本を読むのに夢中になって夜ふかしでもしたんだろ」

「そんなところだ」

「テストもあるんだしほどほどにしとけよ」


今までも本に夢中になって気付いたら朝なんて事もあったので友人はまたかといった感じで呆れているが今回の寝不足の原因は本ではない。

寝不足の原因は琴平舞衣なのだ。


昨日の夜に週末のバイトをどうするか聞き忘れていた俺は琴平舞衣にメッセージを送った。

すぐに確認は取れたのだが何故かそこからメッセージのやり取りが続いてしまったのだ。


前に琴平舞衣から既読無視をしないでと言われていた俺はしばらく付き合うことにしたのだが普段こういったやりとりをしない俺は途中で面倒くさくなってしまった。しかしそれをバッチリ見抜かれて怒った琴平舞衣をなだめるために何故か通話をする事になってしまったのだ。

そして彼女が満足するまで付き合った事で俺は寝不足になったというわけである。


俺は寝不足の原因である琴平舞衣の方に目をやると彼女は楽しそうに友人と話していた。

同じ様に遅くまで起きていてたはずなのに俺とは違って元気いっぱいである。


「テストといえば週末はどうするんだ?」


友人が話かけてきたので俺は琴平舞衣から視線を外して友人の方を見る。どうやら俺の週末の予定が気になるようだ。


「残念ながら週末は店番だよ」

「まじか?久しぶりに春一と勉強でもと思ってたんだけどな」

「すまんな。また今度誘ってくれ」


俺は友人に二重の意味で謝罪していた。

週末に店番があるのは本当だがそれだけではないからだ。俺はバイト終わりに琴平舞衣と勉強をする事になっている。流石にそれを伝えると騒ぎ出すだろうから申し訳ないが内緒にさせてもらった。


「まぁ俺はお前よりも琴平さんとか坂出さん達と勉強会をやりたいけどな!」


しかし友人はそんな俺の事など気にせずに何やら自分の願望を口にしている。うん、やっぱりこいつには内緒にして正解だったみたいだな。

まだ見ぬ青春に思いを馳せる友人を見ながら俺は自分の判断が間違っていなかったと確信するのだった。



昼休みになったので俺はいつもの旧校舎にあるベンチで昼食を食べよと思い購買に向かって歩いていた。あの場所は思いの外過ごしやすいので俺のお気に入りスポットになっている。しかしそろそろ梅雨入りしそうだしそうなるとあそこは使えなくなるんだよなぁ。また別の場所を探さないといけない何て考えていると


「善通寺くんも購買に?」


後ろから声をかけられたので振り向くと坂出さんが立っていた。


「そうだな。坂出さんも?」

「えぇ。よかったら一緒に行きましょう」

「別に構わないけど」

「じゃあ行きましょうか」


俺は坂出さんと購買に向けて歩き出した。

そう言えば坂出さんと2人になるのは呼び出された時以来だな。


「昨日は急に押しかけてごめんなさいね。

それに無理も聞いてもらったし」


坂出さんは昨日の事を謝ってきたが別に迷惑だとは思わなかった。ほんと真面目な人だよな。それに元々はこちらから言い出したことなので坂出さんが気にするような事ではない。


「こっちこそ坂出さんには相談にのってもらったからな。お互いさまじゃないか?」

「確かに先に相談してきたのは善通寺くんの方だったわね。なら遠慮なく相談するからあなたも何でも相談してちょうだいね」


坂出さんはそう言うと何やらニヤニヤしながらこちらを見てくる。どうやら意外にも坂出さんは恋バナとか好きなようだ。しかもお節介を積極的に焼くタイプである。勉強会のこともあるし今も自分の事よりも楽しそうだ。

まぁウザがられるよりはマシかもしれない。


「そう言えば週末は一緒にテスト勉強するんですって?」

「へぇぁ?」


俺は坂出さんがその事を知っているとは思わなかったので驚いて変な声が出てしまった。

名前を出さなかったのは坂出さんなりの配慮なんだろうな。


「本人が教えてくれたのよ」


そんな俺を見て坂出さんは楽しそうに笑いながら何で知っているのか教えてくれた。

なるほど琴平舞衣から聞いたのか。


「テスト前なのにバイトに入るって言うから少し心配になったんだよ」

「なるほどね。とても嬉しそうにしてたわよ」

「ただの勉強会なのに何が嬉しいんだか」

「さぁどうしてかしらね」


坂出さんはそう言うと何やら意味深な目でこちらを見てくる。その目で見られると何だが落ち着かなくなるのでやめて頂きたい!

俺は居た堪れなくなったので話題を変える事にする。


「坂出さんは一緒に勉強しないのか?」


俺も坂出さんに倣って名前は出さなかった。


「週末に一緒に勉強する予定だけど」

「2人でか?」

「た、たぶん、そのはずよ」


坂出さんはさっきまでとは一転して少し顔を赤らめながら小声で予定を教えてくれた。

それにしても週末は坂出さんも大屋冨と2人で勉強会をするのか。


「よかったじゃないか」

「どうかしら。今までもテスト前には一緒に勉強してたからそうしてるだけかも」

「でも少なくとも2人でいるのが嫌とは思われてないって事だろ?」

「それはそうかも知れないけど。何を考えているのか分からないのよね」

「まぁあれだけ鈍感なら不安になるのも分かるけどな」


俺はここ最近で実感した大屋冨の鈍感っぷりを思い出して苦笑いをしてしまう。


「確かに鈍感だと色々大変みたいね」


坂出さんは俺の顔を見ると呆れたように大きなため息をついている。ここまで呆れるとかほんと大屋冨は何であんなに鈍感なんだろうな。

そんな事を考えていると購買に到着した。


「取り敢えずはテストに集中する事にするわ」

「それがいいかもな。テストが終わったら改めて相談にのるよ」

「ええ、そうしましょう」

「それじゃ週末頑張ってくれ」

「あなたもね」


購買で昼食を買い終えたので坂出さんは教室に俺は旧校舎に向かうためここで別れた。


そういや坂出さんと普通に話せたな。

1人になった俺はふとそんな事を考えた。

最初に話した時は距離を感じたので男子とは距離を取るタイプだと思っていたんだけど今日はそこまで距離を感じなかったんだよな。

理由は分からないけど悪いことではないので俺はそれ以上考えるのをやめたのだった。


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新作になります。

完結目指して頑張ります。


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