第6話 女王暗殺!?

  私は広い肩に土木を乗せて運び、柱を立ててを繰り返す。人手が足りない。クソジジイの王が国民を戦争と飢えで殺してきたからだ。

 ヒーラーグループが魔術で手伝ってくれて、魔王トガリも働いてくれているが、終わらない。


 さすがに、疲れた。

 私は道端に寝転がった。

 チクっ。

 ん、なんか腹が痛いな。


 チクチクチクチク。なんだこれ?


 目を開けると、女性が私の体にまたがって、必死の形相で私の腹をナイフで刺していた。


「くそっ! なんで刺さらないの!」


 私の筋肉は彼女が持っているナイフでは傷つけられない。


「えい! えい! え、えーー!!!」


 女性が悲鳴をあげて、飛び退いた。

 ナイフが曲がっている。


「すまない、お嬢さん。私の腹筋が固くてナイフをダメにしてしまったね」


 私は立ち上がり、女性に詫びた。


「姉御ー!! この女、姉御になんてことを!!」


 魔王トガリが飛んできたので、私は翼を持って制した。


 女性はよく見れば痩せ細り、汚れて破れた衣服を着ている。茶色の丸い瞳に栗色の髪、眉は凛々しく聡明そうである。


「訳を聞こう。どうして、私を刺したのですか?」


「…………殺されたから…………あんたは!!

 あんたは私の家族を殺した王の娘!!

 信用できない!!!」


 女性が叫んだ。


「そうですね。私の父は国民を奴隷扱いしてたくさん殺した。私の父はあなたの家族をどのように殺したのですか?」


「父さんは…………勝てない戦争に行かされて。戦争じゃない、無茶な作戦で自爆させられた。兄さんも!! 弟は肺病で、母さんは過労で。わたし一人だけ、生き残った。母さんは私にこの国から出るように言ったわ、でも家族と一緒に幸せに住んでた時代を思い出すと、離れられないよ…………」


 なんと辛い。王は隣の国に戦争をしかけたが相手にされなかった。むしろ戦争をやめるよう諭されていた。王はわずかな食糧と武器を持たせて兵士を自滅させた。

 兵士は敵国にたどり着く前に死んだ。


 肺病が流行りだしても何もせず、税をむしりとるため国民を働かせてきた。

 私がどれだけがんばっても、その罪は深く許せないことだろう。


「申し訳ございません。あなたの大切な家族を奪った。私は終わらぬ贖罪を続けるしかない」


「ううう、なんて酷いんだー! 家族がみんな不幸な死に方なんてー!」


 魔王トガリが、わんわん泣き出した。

 女性は不思議そうな顔でトガリを見ている。


「ヒーラーグループ! きてくれ!」


 私なヒーラーグループを呼んだ。女性がナイフを強く握りすぎて、手のひらが赤くなっていたからだ。


「お嬢さん、手を冷やしますね」


 スーが手をかざすと、女性の手のひらの赤みは消えた。


「足をすりむいてる、痛そう」


 ギューが女性の膝小僧の傷を治す。


「とても心が傷ついてるな。背中をあっためよう」


 ジョーが女性の背中にマントをかけた。


「あ、ありがとう…………」


「どうだろう。私はあなたのように、クソジジイ王によって不幸になった人にこそ政治に関わって欲しい。私の家臣になってくれませんか?」


 私の提案に女性は驚いた顔をした。


「で、でも。私はあなたを殺そうとしたのに」


「それが良いのです。私が間違った時、私を刺してくれる人が傍にいて欲しい。あなたは読み書きはできますか?」


「ええ、できますけど……」


「この国には教育も行き届いていません。病院と住宅を作り終えたら、次は学校です。ぜひ、あなたの力を貸してください」


 女性はマントをたぐり寄せて少しうむつき、思案した。


「わかりました。私の名前はシーナ。サワムラ女王、良い国を建国すると誓ってください」


「シーナさん、サワムラは誓います。良い国建国します」


 私はシーナにかしづいて誓った。


 

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