第4話 魔王が来ただって?

 定規と鉛筆で設計図を書く。人が住みやすい環境を考えると穏やかな気持ちになる。圧政に苦しんだ人々が幸せに暮らせる家を建てたい。

  食料は国交が回復した隣の国、あの歌って踊ってる隣国から輸入させてもらい、国民は飢えの心配はなくなった。農地の作物も順調に育っている。

 あとは安心して暮らせる家だ。


「サワムラ女王、大変です!」


 ドアを勢いよく開けて、タロウちゃんが言った。


「魔王って人がきてます!」


「は? 魔王??」


  私は自分が異世界に転生したことを思い出す。私は落ち着いて立ち上がり、焦ってるタロウちゃんをなだめて外に出た。


「ぎゃーははは! 出てきたな、女王!」


 空に魔王がいた。コウモリのような大きな羽根、ツノ、ツリ目の若い男の顔にレザーの服。めちゃくちゃ魔王っぽいの来たな。


「オレサマは魔王トガリ! おまえの国を滅ぼしてやる! しょせんおまえはガタイがいいだけの女、オレサマには逆らえない!」


 魔王は高らかに言うと、目からビームを出して建物の一部を破壊した。


「どうだ、見たか! はっははは」


「ありがとう」


 私は魔王トガリに言った。


「あの建物は老朽化で壊す予定だった。壊す手間が省けたよ」


 私が言うと、魔王トガリは目を丸くした。


「ふっ、知っておったわ!」


 魔王トガリが顔を真っ赤にして叫ぶ。

 絶対に嘘だ。


「つ、次は壊されて困る建物を·····えっと、ど、どこにしよう·····」


 私はハッ!と掛け声をあげてジャンプして、魔王トガリ捕まえて地面に着地した。

 魔王トガリにチョークスリーパーのお仕置をする。

 

「いいかい。建造物というのはまずは設計し材木を集め大工さんが作り上げる、ありとあらゆる人の力が集結している。それを壊すというのはとても罪深い」


 チョークスリーパーをかけられて、目を白黒させている魔王トガリに私は説教した。


「ずみまぜん、もう、もうしまぜん」


 魔王トガリが謝ったので、離してやると地面に手をついてぜぇぜぇと息している。


「では、もう帰ってもらおう。私は仕事の途中だ」


「姉御!!!」


 トガリが叫んで額を地面につけた。


「こんな強い人に出会ったのは初めてです! どうか姉御、俺を弟子にしてください! 手と足となって働きます!」


 魔王トガリは翼を畳んで、そう懇願した。


「えー··········」


 魔王を舎弟? Why???


「どうしよう、タロウちゃん」


「弱い魔王だし、利用すればいいと思います!」


 二パッと笑ってタロウちゃんはえぐいことを言う。


「わかった。舎弟にしてやろう。まずは自分が壊した建物の瓦礫を片付けなさい」


「ありがとうございます!」


 ペコペコ頭を下げながら、魔王は崩れた建物へと飛んでいった。


「はぁ、異世界。何が起きるかわからない」


 私は呟き設計の仕事に戻った。



 

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