第23話 勇者たる証


「ヒャッヒャッヒャッ」

ギガントメガオーガの不気味な声が響く。


どうやって食べようか……舌舐めずりするようだ。舐め腐ってやがる。


でも、油断するから……こちらにワンチャンスあるとかは**無い!!**


舐めててもハッキリ言ってヤバい!!



「あいつは……」

ジジさんの顔に汗。


「メガオーガの上、ギガントメガオーガ、S級……目が四つあるから、反応速度が倍」


「どうする、小僧」


(チンタラしてられないけど……。

俺が、あれを使って、勝った後は……?

いや、勝てなければ、死ぬ……)


腹を括る。


「身体強化(改)を使う。

大きいほうを必ず殺す。

3秒だ!

俺は、ボロボロになって、動かなくなる。

ポーションも効かない」


「ワシはつゆ払いか」


「ああ、メガオーガを殺してくれ」


「無茶を言う……」

息を飲むジジ。


「倒したら祝杯だな」

さすが、腹のくくり方が一流。


息を吸った。


「ああ、いくぞ!!」


神経に魔力を流す。

……オラ!もっと早く信号を伝えろ!リミッター外せ!


脳の回路にも魔力を流す。


その瞬間、思考が時間を超越する。

周りの世界がスローモーションに見えて、音はハウリングしたようにその体を成さない。


俺が「SSS級の魔王:リオン」にとどめを刺した力。


スローモーションの世界の中で、視界の隅に気づく。

(ここで、ジョーカーも揃っちまった、俺達の勝ちだな……)



メガオーガにジジさんの右腕を落とされる。

(ジジさんっ!!)

油断したオーガの急所にジジさんの左のナイフでズブり。

(右腕を犠牲にして捨て身っ……?!)

返り血をドバドバ浴びながら、しっかりトドメを刺すジジさん。


ギガントメガオーガも動いているが、このモードの俺は無敵だ。

4本の腕を無視して、4個の目の間に剣を突き刺し、一瞬で意識ごと刈り取る。


ギガントメガオーガの身体が倒れこんでくるのを避けたと同時に身体強化(改)が切れる。


映像が元に戻り、音も通常に流れてくる。

無理をした神経に激痛が走る。


……頭がいたい。無理……もう動けねぇ。


かろうじて、呼吸はできるが、俺は地面にうずくまる。


ーー「ズシャ」

ーー「ズシャッ……」

切り刻む音がする。

おせぇよ……でも、助かる。

限界だった。


「ユウちゃ〜〜ん」

聞きたかった声の主。

人前で「ちゃん呼び」……ヤメて……。


優しく胸元に抱きかかえられる。

甘い香水の匂い。


いつもと違う香水の匂い。


ここぞとばかりに香水を変えてきたのか?


あざといなぁ……うちのジョーカー。

おれ、嫌われてなかったのかな?


柔らかい胸の感触と、安心感に、フワフワする。あれ、何で戦っていたんだっけ……。


身体は痛いのに、極上の多幸感に。


もうここで死んでもいいのかも……。

なんて考えながら、俺は甘い香りの中、意識を手放した……。



────第ニ部 完────

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る