不思議と温かい気持ちにさせられる小説でした。読了後、幸せを分けてもらったような、そんな気がしました。
本作の主人公である山田は、一人暮らしの社会人だ。ある日、山田は最近彼の部署に異動してきた同期の藤崎に「お弁当美味しそうですね!」と、声をかけた。藤崎のプラスチック容器には様々なおかずが詰められており、彼女の料理上手な一面が存分に表れていた。
自炊ができる藤崎を、山田は尊敬していた。彼は料理の類が絶望的に苦手で、いつも食材を無駄にしてしまうのだ。山田はコンビニのおにぎり二つしか昼食に用意していなかった。近年、物価高の影響で食品を買うのも大変だからだ。そのことを藤崎に伝えると、「そっかぁ」と言って、お弁当を食べ始めた。
そして、次の日の昼——といったお話です。
とても面白かったです。いつもながらの繊細な筆致は作品に没入感と臨場感を生んでいて、読者を物語の世界に誘ってくれます。料理の描写がかなり多いのですが、読者にもわかりやすいよう細かく書かれているだけでなく、必要以上に長々と書くこともないので、物語のテンポが良く、するすると読み進めることができます。
お話の構成も非常に巧みで、徐々に二人の関係性や隠された真実が露わになっていくようになっています。作者の衣ノ揚さまの緻密な計算の賜物だと思います。
何より私がいいな、と思ったのは、主人公である山田の性格とタイトルです。読み進めていくと、「ああ、確かに彼にとって彼女はマニック・ピクシー・ドリーム・ガールなのだ」と納得すると思います。
登場人物の年齢を考えると正確には違うかもしれませんが、本作はボーイミーツガールのようでした。
都合の良いボーイミーツガールはただの作者の操り人形にしかなりませんが、本作は細かいところに伏線や意図を込めているため、キャラクターが生きた人間のようでした。
改めて言いますが、とても面白かったです。絡み合う二人の感情が上手く書かれた傑作だと思います。15,000文字あるはずのに、気がつくと読み終わっています。超おすすめです。
ぜひ、ぜひご一読ください!