禁書庫のアストリア
雪伯 翔
プロローグ: 禁書庫のアストリア
──静寂が支配する禁書庫。
古びた書庫、無数の書物が静寂の中に眠る場所。
そうそれが禁書庫。
誰も入ることの許されていない禁断の場所。
だが、その空間はただ古びた図書館とは違っていた。
空気にはかすかな魔力の粒子が漂い、まるで本たちが生きているかのような気配があった。
ページをめくる音もないのに、どこかで誰かが読書をしているような錯覚。
本棚の間を歩けば、背表紙がかすかに震えるのが見える。
「……ここは、本当に不思議な場所だな」
少年──アストリアは足を止め、あたりを見渡した。
壁に取り付けられたランプは、魔法の炎でゆらゆらと青白く光っている。
書庫の奥へ進むにつれ、空気はひんやりと冷たくなっていった。
ふと、足元に視線を落とす。
古びた木の床に、一冊の本がぽつんと落ちていた。
「ん? こんなところに……」
無造作に置かれた本はどこか不自然で、
タイトルは書かれていない。ただ、表紙には複雑な魔法陣のような紋様が刻まれていた。
「……これは?」
アストリアはなんの気も無しに手を伸ばした。
そして──指が表紙に触れた瞬間。
「わっ……ちょ、ちょっと待って! どうなってるんだ!?」
胸の奥をつかまれたような感覚と共に、体が引っ張られる。
空中に浮いた本がぱっと開き、光の奔流が視界を埋め尽くした。
視界が光ったと思ったら、見た事のない場所に来ていた。
そこは炎に包まれた世界。マグマで出来た城があった。
「選ばれし者よ。知識を求める代償として、炎の試練を受けよ──」
─ ─
─ ─ ─
─ ─ ─ ─
(炎の魔法書の試練を受けている)
ビュンっ
アストリアは何かの上に倒れ込み、息を切らした。
「い、今のは……」
視界を上げると、目の前にはさっき見た本棚が並んでいた。
だが、どこかが違う。
先ほどよりも、書庫全体が微かにざわめいているように感じた。
彼は確かに 「本の中の世界」 に入っていた。
そして、そこで「試練」を受けたのだ。
だが──少年はまだ知らない。
この一歩が、世界の秘密を暴く冒険の始まりであることを──。
禁書庫のアストリア 雪伯 翔 @77yuki19
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