デス・ビブリオン・ゲーム

我肉(がにく)

第1話 ゲーム・スタート

「普通」とは最も残酷な言葉である。



必死こいて他人との差を埋めるべく頑張る。その努力を褒めてもらおうとすると、



「でもそれって、『普通』だよね?」



と一蹴される。



さらに最悪なことに、「普通」になれたとしてもそこから更に世の人は「特別」を求めてくる。



「あなたの長所を教えてください」



「君にしかできないことって何ですか?」



「あなたは将来的に何になりたいの?」



これはそんな世の中に揉まれた一人の男が、「普通」の良さに気づくまでの物語。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



龍ヶ谷周斗(りゅうがたにしゅうと)。何者にもなれない高校生。あまりにも平凡としか思えない生活を送る。



…起床、通学、帰宅、睡眠。


そんな無限ループを、頭がおかしくなってしまうほど繰り返していた。



ただ、夢も持たずに。



そんなループを突然ぶち壊したのは、朝、目の前に広がる信じられない光景だった。



見たこともないような西洋風の村のような景色、集められた数百名ほどの人間、正面に写る巨大なモニター。



…デスゲームだ。これは確実にデスゲームだ。



今まで作品を読み漁ってきた経験が、冷静にこの状況を分析する。



そして…そのまま定められたテンプレを辿るかのように、モニターには仮面を被った男性らしき人の顔が映し出される。



「これから皆さんには、命を懸けてあなたの人生が価値あるものだと証明していただきます」



元々あったざわめきが大きくなる。文句を垂れる声、野次がどこからか聞こえてくるが…



捻じ曲げられるように、静かになる。



「あなた達の言葉はこちらの方で封印させてもらいました」


「…なんでそんなことができるって?その説明も踏まえながら、今の状況を説明しましょう」


「私たちの方で、皆さんが眠られているうちに電脳世界へと転送させていただきました。権限は全て私にあるので例えばこんなことも…」



…痛い!!



突然、身体を一本の痛みが駆け抜ける。


恐らく、参加者全員に電流のようなものが流されているのだろう、と目の前の光景から推測する。



「…できてしまうのでね、無駄な抵抗はおやめになさって」


「というわけで説明の続きに移ります。現在、こちらの方で皆さんの今まで辿ってきた人生を全て拝見し、勝手に値段をつけさせていただいています」


「そして皆さんには、この人生の値段を出来るだけ上げること、つまり、人生をより面白いものにすることを目標にしていただきます」


「人生の値段を元に順位をつけ、その順位の下位の方から打ち切り、つまり、死んでいただきます」


「詳しいルールはオペレーターがつくのでそちらに聞いてください」



「…それでは、早速開始といきましょうか」


…3

…2

…1


ゆっくりと、カウントダウンがされながら。



何もわからぬまま、俺たちはゲームに放り出される。



…0



「…ゲーム、スタート」



ここを起点に、俺の人生は180度変わる。




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