事件勃発①
「今、この店で会社の子と飲んでるから来て欲しい! 紹介したい奴がおるねん!」
そう言われて向かった先はとある焼肉屋。電話口から聞こえてきた彼の声は呂律が回っておらず、相当酔っているように聞こえた。
この日、彼は会社の送別会で昼から飲みに行っていたので、もう飲み会は終わっているかと思いきや、まさかまだ飲み会が続いているとは……。
私は溜息しか出なかった。彼は酔っ払うと気が大きくなり、お代は全て自分が出すなどの大盤振る舞いをし始めるのだ。
この件について言及しても、俺が節約すればいいし、私には迷惑をかけていないの一点張り。確かに私の財布に直接的な被害はないかもしれないが、家族を持つ者として、その考え方はどうなのか? いつも疑問を抱いていたが、これを言うと喧嘩になってしまうので、彼に対して何も言わなくなっていた。
「おーい、こっちやー!」
焼肉店に入ると彼は会社の女の子といた。いつもいる上司や後輩くん達はおらず、初めて見る子だった。
「おう、お疲れ! 何飲む? とりあえず、ビールでええか?」
頷いた私はとりあえず、向かい側に座る女の子を見た。普通のどこにでもいるような女の子に見えた。目は大きく、パッチリ二重の体育会系女子。そして、場の空気を盛り上げてくれるムードメーカーという言葉が似合う女の子だった。
仮にこの女の子をA子としよう。A子も相当飲んでいるのか、変なテンションで彼と話していたのが気になった。
それにしても妙に馴れ馴れしい。やけに二人の距離が近すぎやしないか? 私が少し警戒していると、彼の口から衝撃的な台詞が出てきた。
「俺、A子の事がめっちゃ好きやねん! 可愛くて可愛くて仕方ないんや!」
ガツンと頭を鈍器で殴られたかのような衝撃がした。あぁ、後輩として好きってことね。酔っ払いが何を言ってるんだ……と呆れ気味に苦笑いする事しかできなかった。
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