BL漫画の転生モブですが、悪役王子に執着されていたようです
魚谷/ビーズログ文庫
第一章 前世の自覚
1-1
頭の中に
(あぁ、これ、僕の前世……)
ベッドで目覚めたジェレミー・ランドルフは、交通事故で
しかしジェレミーは残念ながら主人公ではなく、悪役のモブ。
主人公は、両親を幼い
どれほど苦しい
クリスは夫妻の下で家族の
そんなある日、一人の少年と出会う。代々
花のように
本来であれば交わるはずのなかった二人は初めて会ったその
そんなクリスに
》く悪役王子の取り巻きである
「いったぁ……」
体を起こそうとして全身に走る痛みに、
どうにかこうにかベッドから
き込む。
これと言った
(前世で
基本人格はあくまでジェレミーのままで、そこに前世の意識や記憶が少し混ざっているという形と言ったらいいだろうか。
(それにしても、ひどいな……)
顔には
その時、ノックの音が聞こえた。「何?」と応じれば、メイドが入ってきた。
「お
「……よく覚えてないんだけど、僕はどうしてこんなにボロボロなの……?」
「お坊ちゃまはシャフト子爵家のご令息に
最高のタイミングで前世を思い出せた。
今は王国
断罪されるのはおよそ一年後。今ならまだ断罪エンドを
「それで、どうかした?」
「
「分かった」
私服に
断罪を
ルーファス・ゼイン・サドキエル。それが悪役王子の名前。
ジェレミーたちの暮らすサドキエル王国の第二王子。
王族の取り巻きは
ルーファスは王家に生まれながら魔法が使えず、
魔法は火、水、風、土、
この世界において王侯貴族は魔法が使えるのが当たり前であり、使えないのは
その原因として上げられるのが、生みの母が平民出身の
ジェレミーとルーファスの境遇は似ていた。
ジェレミーは書斎の
「入れ」
父のオイラスは、黒髪に白いものが混ざり始めた中年で、見下すような目を向けてくる。
「学校で
「……いいえ」
「だろうな。大方、あの無能者に命じられたのだろう。まったく。お前があの男とこっそり会っていると知った時に無能者だと分かっていれば、お前を従者にするという要求を断っていたのものを……」
「
「ほう。どういう風の
「ようやく目が覚めたんです」
「……ならば今回は
黒髪に緑色の目、百六十センチのジェレミーより一回りほど高い背。
バルセット・ランドルフ。ランドルフ家の
「父上に
「……兄上までお小言ですか?」
「フン、お前のことなんてどうでもいい」
そう
ジェレミーは自分の部屋へ戻り、ベッドに
(絶縁、か)
昔から、ジェレミーはバルセットにいじめられていた。
それをルーファスが救ってくれたのだ。
(子どもの頃、殿下は僕の希望だった)
ルーファスとの思い出は、どれもこれもいいものばかり。
王宮で
(本来なら絶縁なんて……)
ジェレミーははっとして頭を
(子どもの頃のことは忘れよう。断罪されて死ぬなんて絶対に
翌朝、馬車で学校へ向かう道中、窓からヨーロッパの街並みにも似た風景を
前世の記憶が
白い
正門前で馬車を降り、校舎へ続く
道の
その桃色と、学校の制服が美しい対比を見せる。
学校は三年制で、前世の大学のような単位制。
学生の大半は貴族だが、
ジェレミーは二年生。クリスは一年生、ラインハルトとルーファスは三年生だ。
「ジェレミー
振り返ると、一人の少年が
》。彼がクリスだ。
(さすがは主人公、いつ見ても
クリスの背後には、燃えるような赤い
これまでのジェレミーなら、その姿を
しかし前世を思い出した今となっては逆で、胸が高鳴った。前世では、クリスのためならばどんな困難も
「ジェレミー先輩。昨日は
「自分を襲った
「いくら何でも昨日はやりすぎだったよ。氷の上級魔法を使うなんて」
「
「それでもだよ。ほら、謝って」
「……」
「約束したよねっ」
ラインハルトは、大きな舌打ちをする。
「……お前ごとき下級魔法で十分だったがつい頭にきてやりすぎただけど元はと言えばお前が何もしてこなけりゃこっちだって何もせずに済だんだそれを忘れるな!」
ラインハルトは一息に告げた。謝っているのか
いや、そもそも非があるのはジェレミーなのだから、クリスたちが謝る必要なんてない。
「やってられるか。どうして襲われたこっちが謝らなきゃならないんだ!」
ラインハルトはそっぽを向く。
推しと主人公が
「……何、ニヤついてやがるっ」
「す、すみません……。クリス。ラインハルト先輩の言う通り、悪いのは僕だから謝罪はいらないよ」
「ほらみろ」
「……そうですか?」
「本当に」
「それじゃあ、失礼します」
ラインハルトと自然に手を
時計
その時、「そこの人、
「風よっ!」
ジェレミーの体を緑色にきらめく
無風だったにもかかわらず、その場に小さなつむじ風が発生し、サラマンダーを巻き込んだ。目を回したサラマンダーは、気絶する。
「ありがとうございます……!」
少女は一年生だろう。この時期、魔力のコントロールが
(魔法のコントロール力が上がってる?)
今までのジェレミーなら力加減を誤ったり、
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