拍手の暴力

大将

賛美の暴力


 また今回もダメだった。

 自分の思い描いた物を夢見て進む一人の少年。

 初めはおざなりながらも進めてみた世界。


 結局は消えてしまった。


 それでも諦めず考えて考えて、歩み始めた世界。

 その世界はゆっくりながらもかつてない程進む事が出来た。

 そこにはたくさんの声が響いていた。


 何がなんでも叶えたいもの。ゴールであり、スタート地点。

 きっと、卓越した人が見れば何なのか分かるのだろう。


 だがその声に世界が潰れた。


 それでも諦められなかった。

 何度でも立ち上がる英雄のように、負けを知らない勝者を夢見て。


 練りに練った作戦。

 それは破滅を求めたくない、自分への足枷であり剣である。


 新たな地に足を踏み入れ、自らを鼓舞して進み出す。

 足枷の剣を血で滲ませながら。

 途中で得た英傑を胸に秘め、飛び立てる日の夢を見る。

 飛べる人だっている、それなら僕だって──。


 でも翼がそれを許さなかった。


 大勢の砂漠を歩む者。

 彼らに分け与えられる数枚の翼。

 例え自分の力が強くても、砂中では飛び立てない。

 埋もれた体は誰にも見られない。


 悪魔の知恵を手に入れた。

 全てを使わず、必要な時の道具として。

 少年の力は確かに強くなっていた。


 ならばなぜ勝てない。

 叶えたい夢、足枷の剣、悪魔の知恵。


 手に入れた時点で負けなのか。

 使わない者だけが飛べるのか。


 心臓の大きな血管を握りしめられるような胸の締めつけ。

 それでも少年は立ち上がる。

 虚空の拍手と、賛美な暴力を受けながら。


 今日も歩き出す。

 飛べた日の空を夢みて。

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拍手の暴力 大将 @suruku

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