第十一章：暴かれた真実と繋がる絆

「アッシュ」が口にした「あの子」という言葉は「あまがみ」の心に小さな波紋を広げ続け胸中に横たわる疑念の影を残し戦場の喧騒が遠のく

ほど心の奥底に沈み彼の、あの一言だけが妙に鮮明で胸の奥で重く響き彼女の心を掴んで離さない彼の過去に何が眠っているのか

そして、なぜ彼はここまで己の命を削るように戦いへと駆り立て続けるのか

「アッシュ」は「あまがみ」を守るため鬼神のごとく

まるで命を顧みずに剣を振るい敵を薙ぎ倒していく

「【オンミカミザン鬼神斬】」

鋭い声と共に彼の剣から青白い気が迸り敵をまとめて薙ぎ払った

まるで怒りそのものが形となり威圧感が戦場を支配する「あまがみ」はその背後で手を翳す

「【聖歌セイクリッド・カンティクル】」

淡い金色の光が彼女の身体を包み傷を癒しつつ戦意を取り戻させる光は「アッシュ」の背にも届き深い痛みを抱えながら戦う彼の動きを支える

その戦いぶりは苛烈で鬼気、迫るものがある「あまがみ」は彼の背負うものの重さを感じずにはいられなかった彼の傷を癒すたび自身の力が削られ失われることを承知で

それでも彼女は全力で歌い二人は寄り添うように生き延びていく

そしてある日の斥候任務の最中に「あまがみ」と「アッシュ」は敵陣深くで孤立した味方の部隊を発見し

その中に見慣れない一人の女性兵士と出会った彼女は血塗られた剣を手に剣を振るっている

その姿は冷徹であり冷静かつ淀みなく的確に敵を捌いていく鋭く正確な一太刀のその動きは

まるで「アッシュ」の影を映した鏡のように酷似していた彼女の腕には「アッシュ」のものと同じように古びた意匠で革の腕輪が巻かれ

「アッシュ」はその女性兵士を目にした瞬間に血相を変え目を見開き彼の瞳に浮かぶのは驚愕と、そして深い苦痛の色が浮かんだ

「……っ…「リーネ」！……」

「【カゲカガミセン影鏡閃】」

リーネの剣が高速で振るわれ敵の攻撃をことごとく弾き返す

「アッシュ」が思わず漏らしたその名を呼ぶ声は震えを含み女性兵士もこちらに振り返り彼女の瞳もまた「アッシュ」を認め一瞬だけ感情を揺らがせたが

だが次の瞬間すぐに、その瞳は鋭く冷たい光を帯び敵を斬り払い片付け終えると「アッシュ」と「あまがみ」の方へと向かい歩み寄って刃よりも鋭い言葉を突きつけてきた

「生きていたのか……兄上……いや裏切り者よ……」

「あ……っ……」

彼女の言葉に「あまがみ」の心臓が強く脈打ち息を呑む兄上？裏切り者？理解が追いつかず

ただ二人を見比べ混乱する「あまがみ」の前で「アッシュ」は動揺を隠せない様子で立ち尽くし、ただその名をかすれ声で繰り返す

「「リーネ」……なぜ……ここに……」

その場で交わされた短い言葉の往復その沈黙の隙間に二人の間に深い溝があることを示している事を「あまがみ」は悟った「リーネ」は「アッシュ」の元を去る際に冷ややかに吐き捨て言い放った

「貴方が守るべきは……その歌姫ではない……我らの故郷と……死んでいった者たちの報われない魂だ……」

その一言は鋭い刃のようにその場を切り裂く「リーネ」の登場は「アッシュ」の過去を

より具体的で生々しいものとして「あまがみ」の前に突きつけた「アッシュ」には妹がいたのだ

そして、その妹は、彼を裏切り者と呼ぶほど過去の出来事を恨んでいる「あまがみ」の胸には「アッシュ」が

ずっと隠し抱えていた秘密の重みが突き刺さり改めて痛感し同時に未だ癒えぬ傷口と彼が背負ってきた孤独が痛ましく

それでも立ち続け「リーネ」の言葉を通して初めて輪郭をもって感じ取り鮮明に理解できた

その夜「アッシュ」は珍しく自ら口を開き「あまがみ」に過去を語り始めた

「……俺の故郷は襲撃を受けた護衛として妹を守るはずだったのに……俺は……その役目を果たせなかった……その時の判断が……「リーネ」には裏切りと映ったんだ俺は故郷を妹を……守れなかった……俺は……あの日からずっと赦されぬまま生きてきた……」

低く、かすれる声と震える瞳と彼の故郷が襲撃されたこと護衛として妹を守れなかったこと

そして、その時の判断が妹に裏切りと映ってしまったこと彼の声は震え長く沈黙してきた痛みを吐き出すように語り

その瞳には深い悔恨の念が混じっていた

「アッシュ」は故郷を

そして愛する妹を守れなかったという深い後悔と裏切り者としての汚名を

ずっと一人で抱え込んでいたのだ彼の、「あまがみ」や兵士たちを守ろうとする強い執着は

この悲しい過去に起因していたのだと知った彼のその言葉は「あまがみ」の心を深くえぐり心を締めつける「あぁ……この人はずっと……たった一人で……」

「あまがみ」は何も言わず静かにただ「アッシュ」を強く抱きしめた彼の背中に自分の想いと温もりを重ねる「アッシュ」の背負ってきた痛みが彼女自身の痛みのように感じられた彼の痛みを分かち合いたい彼の孤独を埋めたい

その思いが「あまがみ」の心を強く突き動かす

「……一人で背負わなくていい……あなたの痛みは私の痛みでもあるから……」

「アッシュ」の肩が震えた沈黙が確かな絆に変わっていく

「リーネ」の出現によって「アッシュ」の過去を白日の下にさらし確かに暴かれ

しかし、それは同時に「あまがみ」と「アッシュ」の絆を

より深く、そして強固なものへと変えるきっかけとなった二人は

それぞれの過去を抱えながらも、この戦場で共に生き抜き

そして「リーネ」との関係と故郷の謎という新たな運命に立ち向かう決意を新たにする

その翌日、戦況に大きな変化が訪れた敵軍の増援部隊が国境を越え

かつてない規模の総力戦が始まろうとしていたのだ

その知らせは疲弊しきった兵士たちの士気をさらに低下させ空には重苦しい沈黙が垂れ込め心をさらに圧迫する

だがしかし、その静寂を破るように「あまがみ」の歌声は違った「アッシュ」の痛みを共有し分かち合ったことで彼女のその歌には

これまでにない深い悲しみと、そしてその奥底から滲み出て

それでも失われぬ希望が込められるように同居し深く沈んでも消えない灯で

それは二人が抱える過去と痛みを映し出す旋律であり同時に生き抜くための誓いだった彼女の声に乗せられた想いは

やがて兵士たちの胸へと届き、かすかな光となって揺らぎ始めていた

「【コウハンセンリツ連携技・光絆旋律】」

「あまがみ」の歌声と「アッシュ」の剣技が共鳴し戦の庭全体に勇気と希望の光が広がる兵士たちは

なお立ち上がり絶望の中にあっても戦意を取り戻す

戦の舞台に流れるその歌声は兵士たちの胸に届き散っていった命を弔い

力を与えていく二人の愛は、それぞれの絶望と過去の影に覆われ目の前の過酷な現実の中で

より強固に、より複雑な輝きを放ち始めていく

それは、やがて待ち受ける新たな戦いへと繋がる確かな絆の証だった