第15話 決意と葛藤

タイトル:占い師(イル・カルトマンテ)


第2章 叡智(えいち)


【第5話】 決意と葛藤


【あらすじ】

ロレンツォはオルテンシアの願いを受け入れられず、自身の決断に葛藤する。過去の裏切りと己の運命に向き合う。


---


「人は、自ら信じるものに命を吹き込む」と彼は思った。

「信じれば、それは真実になる」──少なくともオルテンシアにとって、それは確かな現実だった。

だがロレンツォは心に誓った。

──どんな理由があろうと、俺は行かない。セスの声をまた聞くつもりはない。あの不思議な感覚に身を委ねる覚悟もない。

オルテンシアの幻想の城。

彼は期待を裏切るかもしれない。だが仕方なかった。

──かつての人生でも彼女を裏切った?

そうなのか? いや、違う。どちらでもいい。今度こそ彼は再び裏切ろうとしている。

「行かないよ」

「来て」

彼女の声が、彼の心に響いた。

「待ってるの」

「ごめん。僕は行かない。もしかしたら、また君を裏切るかもしれない。だけど、決めたんだ」

「違うわ」

オルテンシアの声が遠く優しく囁いた。

「誰も自分の前世なんて覚えていない。覚えていたら成長できないのよ」

サーカスのテントには、もう入らない。

たとえ風がやみ、夜が晴れ渡っても。

もう、チケット売り場にそれを見せることもない。

回転式ゲートをくぐることもない。



---


(続く)





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