廃墟の怪
由良 となえ
φ
最近あった話なんだけど。
俺含めて四人で飲んでて、メンツは俺、A子、B太、Cちゃん。
で、酒が回ってきたころにB太が「肝試し行こうぜ」って言い出した。
近くに廃墟があるから、そこ行こうって流れになった。
まあ正直、俺はすぐ察した。
B太、Cちゃん狙ってるなって。
廃墟でビビったCちゃんを「大丈夫、俺がついてるよ」って流れでイチャついて、ワンチャン……みたいな。
ありがちなパターン。
でも、思惑は外れた。
Cちゃん、ぜんっぜん怖がらない。
むしろテンション高めで先頭切ってズンズン進んでく。
逆にB太が「ちょ、まってこわ……」ってビビり始める始末で、俺とA子は苦笑い。
んで、途中でCちゃんが立ち止まって、指差した。
「ねえ、あっちから“たすけて~”って聞こえない?」
は?ってなって、耳をすますけど、俺とA子には何も聞こえない。
でもCちゃんは「行ってみよっか」ってそのまま暗闇に入っていった。
一人で。
やばいって。さすがに。
慌てて追いかけようとするけど、B太はガチでパニくってて戦力外。
俺とA子で探すけど、Cちゃんの姿はどこにもない。
不穏な空気。
A子が「これ……まずくない?」って言ったとき、
反対側のほうから、確かに聞こえた。
「たすけて~……」
Cちゃんの声だった。
俺たちは顔を見合わせて、そっちへ向かって走った。
で、見つけた。
闇の中で、Cちゃんがじたばた暴れてて、何かに引っ張られてる。
慌てて助けようとした――んだけど。
……見えたんだよ。
Cちゃんの腕を掴んでる“誰か”。
そいつが、後ろにも、また後ろにも、ズラッと続いてて。
人。
人。
人。
人。
……闇の奥まで、一直線に“人”が繋がってる。
数なんてもう、分かんない。
何人いるのか。
何なのか。
分かんないけど……ただ一つだけ確信した。
これ、ヤバいやつだ。
その瞬間、Cちゃんは“人の連なり”に引きずられて、闇の中へ消えた。
抵抗しながら。
A子が横で泣き叫ぶ。
俺は……何も言えなかった。
だって、Cちゃん――
「たすけて~」って言いながら、笑ってたんだよ。
廃墟の怪 由良 となえ @kyo-ka
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