引越し屋

俺は引越し屋だ。

もう20年ほど、この仕事をしている。

若い相棒と二人で小さな会社を切り盛りしている。

引越し屋は社会に必要とされているし、誇りもある。

今日も荷物を引き取る。

そして俺たちは一旦、会社に戻る。

冷蔵庫だけ運び出し、その冷蔵庫を今度は運送屋のトラックの荷台に移し変える。

冷蔵庫は普通のそれより重い。

何か入っているみたいだが、

それは知らないし、知りたくもない。

そして、北関東にある人気のない産業廃棄物場（サンパイジョウ）まで行く。

そこの溶鉱炉に「冷蔵庫」を突き落とす。

俺たちは冷蔵庫を「棺桶」と呼んでいる。

トラックを変えるのはNシステムに運送屋が毎週、いや毎日映っても問題にならないからだ。

また、電話だ。

引っ越し屋の繁忙期は、大体3~4月だ。

普通なら。

しかし、俺のやっている「引越し屋」は季節問わず、忙しい。

終。