第28話 ゲル閣下、デス?
キャシーが煙玉を投げ、白い煙とともに視界から消えた。
(……またかよ、ちゃんと保険に入って、アフターケアしてもらえ! そこまでやるかわからないけど)
しばらく歩いていると、遠くから声が響いた。
「号外だよ! 号外!」
近づいてきたガリガリの少年から紙を受け取ると、大きな文字が飛び込んでくる。
『ゲル閣下退陣!』
足が止まった。
嘘だろ! 退陣するのか?!
翌朝。
和風建築のおにぎり専門店で、俺は朝の定食を頼んだ。
白い湯気を立てる味噌汁、艶やかに握られた三角おにぎり、彩りの漬物。
箸を伸ばそうとした瞬間、隣の席にウネウネと動く触手が視界に入った。
「隣、失礼するよ」
「どうぞ〜! ……あ、そういえば退陣するんですか?」
顔を向けると――ゲル閣下だった。
「何のこと? しないよ」
「これです。この号外」
アイテムボックスから昨日の紙を取り出すと、閣下の表情が一瞬だけ強張る。
「……っ! ……私は、退陣していません! するつもりも、ありません!」
そう言うや否や、俺のおにぎりを掴んで一口で頬張った。
ボロボロと米粒をこぼし、口の中が丸見えで……汚い食べ方だ。
さらに俺の味噌汁を一気に飲み干し、息継ぎもせず口を開いた。
「私はね、この国を良くしようと思っているんだよ」
「味噌汁が……そうなんですね! 具体的には?」
「アーニ創生で、IRカジノを進めたいんだよ」
「カジノですか?」
「そう……もし、タリカ帝国に行く機会があったら、ペガラスベラ市に行ってみるといいよ! あそこは、お手本だからね!」
「そうします! ……それより、おにぎりと味噌汁を返して――」
「ヴ、ヴ、ヴッ……」
(何?! まさか吐く気か? リバース枠はルリトだけでいいよ!)
ドサッ!
ゲル閣下はお腹を押さえ、イスから崩れ落ちた。
「ゴプッ! ……ッ!」
口から吐き出したのは、ただの赤ではない――
どこか黒みがかったドロリとした液体。
その赤黒い血が、音もなく床にじわじわと広がっていく。
そして、ゲル閣下は動かなくなった。
店内が静まり返る……
(まさか……死んだの?)
隣のグラシア・ペルティナに小声で聞く。
「ゲル閣下……死んでないよね?!」
「スキル【魔力視】で見て」
言われるまま【魔力視】を使うと、閣下の体は弱々しく点滅していた。
(死にかけてるじゃん! 急がないと!)
こういう時は……どうするんだっけ?
「Hey! グラシア! どうすればいい?」
えっと、なになに?
うんうん、なるほどなるヘソ……
グラシアが俺の耳元で説明した。
「OK! 【パーフェクト・ヒール!!】」
虹色の粒子がゲル閣下の身体を覆い、優しい光が全身を包み込む。
しかし、閣下の瞼は動かない。
「グラシア、これデスしてない?」
「です? ……してないよ。これは! ……呪詛……だから」
そう言い、閣下の服をめくるグラシア。
お腹のヘソの上に――『K』と血の色の文字が浮かんでいた。
(K……カルト教団か? それにしても、グラシアのさっきの間は、一体……)
―――――――――――――
あとがき
グラシアは、ほんの一瞬だけ俺ではなく――この文章を見つめている観測者を見た。
「これは物語じゃない、観測だよ……君がこれを読んだ時点で、もう観測は始まっている」
そして、静かに微笑んだ。
保険に入ろう! アフターケアは、大事デス!
はい、どっちでもいいデス。
因みに物語のゲル閣下は、女神信者です。
主人公のクレイシアが好きなのかも……?
……知れないですね!
今回は、真面目過ぎましたね……
狂気度が全然足りない! クソが!
狂え、狂え、もっと狂え! 作者「フォオオーーwww」
これがZAPISTE流、狂気休息回でした。
休息になってない?! 狂気が全然足りない?! 嘘だろ……
ということで!
次回から、また狂気をぶちまけます。
観測者よ! 読む脳を止めるな!
ZAPISTE! ヅァーピシツーテ!!
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