第24話 赤紙の爆裂!

 街には、ポスターが多く並んでいた。

どうやら、選挙期間中らしい。


 ということで、他にも街頭演説を見ることにした。


(いや〜、それにしてもジョーカー紙過ぎだろ! 俺より主人公じゃん!)


 その時――


 反対側の壇上に、ポニーテールの美少女が現れた。

燃えるような赤い長髪はユラユラと揺れて、陽光が彼女の頭の上に天使の円環を作っている。


 そして、上から、ゆっくりと観衆を見渡していた。

その眼差しは柔らかく、それでいて鋼のような頑丈な芯を奥に秘めている。


「皆さん! 私の名前は、エーベ・ハートです!

私は、この皇国を、必ず守ります。」


 落ち着いた声が広場に響き渡る。

一語一語を噛みしめるように、彼女は続けた。


「今、我が国の民が、カルト教団からの脅威に晒されています。

街では、皇国民が理由もなく襲われ、家族が泣き、商店が閉じ、子供たちが怯えて暮らしている。


 それを見て、私は黙っていられません!」


 エーベは一歩前に出て、拳を胸に当てる。


「外交とは、武器を捨てることではありません。

外で堂々と渡り合うためには、内で揺るぎない力を持たねばならない。


 経済の繁栄も、民の安全があってこそ!

安全が脅かされれば、繁栄も一瞬で失われます。」


 観衆の中から、小さく「そうだ!」という声が上がる。

エーベは微笑み、頷いた。


「私はかつて、この皇国を世界に開き、信頼を築くために働きました。

しかし――


 守るべき民を守れなければ、その信頼も意味を失う。

今こそ、司法も行政も一体となり、被害を受けた人々のために動くべきです。


 この国の未来を、私たちの手で取り戻しましょう!」


 最後に、エーベは刀の柄に手を置き、静かに宣言した。


「愛する祖国と、ここに生きる全ての人のために――私は再び立ちます。」


 演説が終わると、自然と拍手が広がっていく。

だが、なぜか。


 そのまま握手会が始まった。

俺も並んでみるか……


「とってもカワイイですね! ファンになりました! 応援します!」と俺は手を差し出す。


 エーベ・ハートは顔を真っ赤にして、小さい手で握ってくれた。


「あ、ありがとうございます!」とデレている。


 たぶん、俺の顔は自然とニコニコしていたと思う。

気分は、さながらアイドルの握手会だ。


(選挙なんて関係ねぇ! 俺は転生神なんだ! 外から来た女神様なんだよ! だから、お前ら、敬え!)


 そうだ! 思い出したぞ!

日本にいた頃、確か政治家が暗殺されたよな?

誰だっけ?……まあいい、この世界は大丈夫か?


 ヤバいな、こっちの方が気になるな……


「あの暗殺とかって、されないんですか?」

近くにいた人に聞いてみた。


「それはないよ、演説人の所にはバリアーが常時展開されているからね!」


「そうなんですね…ありがとうございます!」


(この世界…何でもアリだな! バリアーか……たぶん、壊せると思うけど……うん、やらないよ)


 あっ! ヤバッ!

もう夕方じゃん!

早く宿に戻らないと!


 宿に戻ると、1階の酒場でオル爺とライトが酒を呑み交わして、メルトしていた。

近くにいるルリトとセリナは、二人とも虚無。


「おーい! 魂入ってる? 生きてる? 死んでる?」


 こういう時は、創造だ!

この世界の命=魔力だから、魔眼【魔力視】だな。


 魔眼【魔力視】!

俺の目から、ハイライトが消える!


 視界が薄暗くなり、二人を見ると…何も見えなかった。


 マジか! 死んでる…いや!

まだ、どこかにいるはずだ!


 どこだ!

いろいろと辺りを見渡すと――


「う、うわー!!」


 何と!

俺の足元に呪いの様に二つの金色と瑠璃色のヒノタマが――

ギュムッと、抱きついていた。


―――――――――――――

あとがき


 オルトとライトを混ぜると危険です!

なぜって?


 それは、どちらも劇薬で、

化学反応を起こして大爆発するからだよ!

作者の頭もバーン! アナタの頭もバーン!


 芸術は、爆裂もろこし! バンバンバーン!


 ZAPISTE! ヅァーピシツーテ!!


 なんか、真面目な回で前話と温度差がすごいな!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る