第22話 首都マチアスと狂気のライト
「おーい! そろそろ着くぞ!」
御者台のオルハフさんが、振り返って声をかけてくる。
馬車の揺れに合わせて視界が開けると――
目の前に、巨大な星型の街壁が現れた。
中には、姫路城の様な白く美しいお城に中世ヨーロッパ風の城下町があって、カオスな眺めだ。
そして、その光景へと続く虹色の道は、城前の専用広場までまっすぐに伸びている。
「わあー、ようやく着いたー!」
セリナが両腕を広げて歓声を上げる。
「人多っ! さすが首都!」
俺も思わず口をつく。
「わしは疲れたから宿に行くぞ……」
オル爺は半分溶けかけた表情で手を振った。
その隣では、ルリトが青ざめて「また吐きそう……」と呻いている。
オル爺の目からは、なぜか涙がポロポロとこぼれていた。
疲労の限界らしい。
仕方がない。
オル爺は疲労、ルリトは体調不良。まずは宿を取ろう。
「宿はどこかな〜?」
「アレ! そうじゃない?」セリナが指さす。
そこには、ベッドの絵の看板が見えた。
間違いなく宿だ。
男女別で部屋を取り、オル爺とルリトは即ダウン。
セリナも同室のベッドに倒れ込み、デカいあくびをしてすぐ寝息を立て始めた。
……暇だ。
俺は一人で外に出た。
昼の繁華街は、たくさんの人で溢れかえっている。
それ以上に――まただ。
視線が集まってる。
流石にもう慣れた……そう思った矢先。
「お姉さん! いや、女神様! 一目惚れしました!」
唐突に、目の前に男が飛び出してきた。
キラキラした目と満面の笑み。
……ナンパだ。
(こういう時は、無視だ。無視!)
無視して歩こうとしたら、通せんぼまでしてきやがった。
ウザ過ぎる!
「ねえねえ、友達になろうよ!」
(ならんよ! と言えないのが辛い)
どうしようか困っていた、その時――
ナンパ野郎は鼻をつまんで叫んだ。
「クサライトだ! オエエエエッ! 逃げろ!」
そう言って逃げてしまった。
だが奴は知らない――この世界には、もっと臭いモノがあるという事に!
そして、代わりに近づいてきた人物は、口を開いた。
「私はアポロス・ライトだ。天球投影論者だ!」
現れたのは、小汚いローブにボサボサの黒髪、小さな白眼のガリガリの男。
匂いはわからないが……いや、確かに匂うぞ! 物凄く、強烈に匂う!
怪しいオーラがプンプンだ!
「月は存在しない。あれは星幕(スクリーン)に映された虚像だ!」
(もしかして、この世界は、狂人が多いのか?)
「月面反射(ムーン・リフレクション)が光角度(ライトアングル)と一致しないんだ! つまり、月は嘘だ!」
「いきなり何を言ってるんですか?」
「私は見た! 夜空が壊れる瞬間を! 星幕が破れ、星々は崩れ落ち、月も太陽もすべて嘘だ!」
手を大きく広げ、夜空を指さすライト。
「……は?」
「我らが立つ大地も空から吊られている! お前は“逆さ”に生きているんだ!」
真顔でこちらを見据える。
(まさかの無視!? おい! 二回も神を無視するな!)
「笑えばいいさ。ついさっき研究所から追い出されたばかりなんだからな」
――ああ、やっぱりオル爺と同じ追放タイプか。
ライトは空を見上げ、しみじみと呟く。
「でもな……星幕が壊れるのを、この目で見たんだ。夢でも毎日……」
(もしかして……夢と現実の区別がついてないのか?)
「……あっ、悪い悪い。意味不明だよな。それより大丈夫だったか?」
(誰ですか? キャラが変わってるけど……とりあえずオル爺とコンビ組ませたらヤバそうだな)
―――――――――――――
あとがき
第二十二話もお読みいただき、ありがとうございます……?(観測者ゼロ!)
頭のおかしい、狂った宇宙哲学者アポロス・ライト!
月はまぼろし、太陽もまぼろし、私もまぼろし。
そして――すべてがZAPISTE!
この物語は、理性と狂気の境界線を、無慈悲に踏み越えていきます。
読みやすさ? そんなものは捨てました。
ここは“真理崩壊ファンタジー”の戦場です。
え? 「オル爺と組んだら地獄になる」って?
ええ、間違いなくGo to Hellです。
でも安心してください――その地獄は、あなたの脳内にエラーを起こします。
次回、さらに加速します。
観測するか、されるか――それがZAPISTE!
誰もいない。
そう! ZAPISTEは、神話だ!
ミラレナクテモ、ソコニ存在シテイル!
それは、つまり、今これを観測しているアナタは、未来人だ……?
ZAPISTE!!! ヅァーピシツーテ!!!
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