第三章
第21話 バイバイ、レインボーリバース
俺たちの目の前に、豪華な装飾が施された一台の馬車が止まっていた。
金の縁取りに、銀のタイヤと瑠璃色の車体。
魔導炉で強化された馬車は、ただの移動手段とは思えないほど重厚だ。
セリナが目を輝かせて言う。
「わあ、豪華〜! これってもしかして……」
「そうだ! 伯爵からの贈り物だ。これでマチアス市まで、すぐに行ける」
オル爺が自信満々に言った。
そして、御者の顔が見える。
御者は、もちろん! この人だ!
「オルハフさん! 久しぶり!」
俺がそう言うとすぐに返事が返ってきた。
「エイベイブだ! 今回は、伯爵様に呼ばれたから、料金は半額だ!」
(オールハーフ! そして、権力サイコー! 私はサイキョー!)
「マジックアウトバーン【魔法高速道路網】を使っていけば、すぐにマチアス市に着くぞ!」
心のテンションがぐちゃぐちゃになっている俺に、伯爵が何か言っていた。
「わかりました! ありがとうございます! そして、さようなら!」
そう言った、俺にイローナが元気よく手を振ってくる。
「元気でね! また、会おうね!」
――が、その勢いで彼女の豊かな胸も、ゆっさゆっさと揺れていた。
これは、物理法則だ! 仕方ない。
「うん! またね!」と、俺も手をひらひらと返した。
そして俺たちは、馬車に乗り込んで別れを告げる。
「「バイバイ!」」
「「バイバーイ!!」」
──そして、高級な馬車がゆっくりと動き出す。
因みに馬車の中は、凄かった。
ふかふかのクッションが体を包み込み、座った瞬間、尻が吸い込まれたかと思うほど沈む。
(ヤバッ……! これ……チョー高級なヤツじゃん!)
そのまま、窓から外を覗くと!
馬車の先には、グルグルと渦を巻いた異空間の穴がポッカリと開いていた。
(なんか……イヤな予感がするんだけど)
馬車がその穴に入ると!
ドゥオオンッ!
グルグルグルッ! ビヨヨヨ〜ン! ミョンミョ〜ン! グルグルパッー!
時間も空間も方向も体も、なにもかもがグチャグチャにされて――
そして、ようやく抜けると!
俺たちの馬車は、空中に浮かぶ虹色の道を走っていた。
「……な、なにこれ」
しかも――
ドン〜ドロドロドロ〜ジャン!
馬車が進むたびに、地面(というか虹)からピアノのような……いや、それより何かヤバいBGMっぽい音が鳴り響く。
(……誰だよ、このBGM書いたの……)
「何これ~!? チョー楽しい! 不気味な音楽、サイコ~!」
セリナが目をキラキラと輝かせて言った。
(ウソだろ……頭の中をシャッフルされる様な吐きそうな感じだったのに……!)
「ク、クレイシア様……は、吐きそうです……」
ルリトが真っ青な顔で口を押さえている。
「ま、窓ッ! 窓、開けてぇぇっ!」
「しょうがないな」とオル爺が窓を開けようとした瞬間――
「うっ……オエエエエーーーーーーー!!」
ルリトの口から勢いよく飛び出した、何かがオル爺のローブめがけて一直線。
ベチャッ!
「うわわわーーーっ!?!?」
(オル爺、ルリトにも嫌われてたんだ……)
ローブを押さえたまま、オル爺が顔面をクシャクシャにしてプルプルと震えていた。
――その頃、首都マチアス市にある、カルト教団のアジト。
暗い研究室の中で、不気味な博士が謎の研究に没頭していた。
ブクブクと反応する謎の液体に、ガラスの容器をはみ出た黄緑と紫の毒々しい、イカゲソ。
「イヒヒッ! この研究が完成すれば……クククッ! 〇〇〇〇が……できるぞ!」
両手を机の上に置いて、再度、口を開く。
「イヒヒッ! 四天王である。タロア様のお力添えで研究を始められることができた。クククッ! この恩は、結果でお返ししよう!」
―――――――――――――
あとがき
エイベイブさんは……
そう、あのバイバイさんです!
「えっ!? 名前違くない? オルハフでしょ!」
「いや、なんかノリが一緒だと思ったんだよ!」
「頭おかしいな、この作品www」
「ZAPISTE!」
──そんなあなた、正解です!
この話、“頭のおかしい”方向に振り切っていくために書きました(笑)
というわけで、読者の皆さんの反応は大体こうなります:
1.素直に「頭おかしいなこの話」と思う人
→ ようこそ、ZAPISTEの本質へ! まだまだ狂っていくぞ!
2.「エイベイブって、あのバイバイさんやん!」とピンとくる人
→ おめでとうございます。あなたのZAPISTE適性、上級です。
3.「あ……え? エイベイブ=バイバイ!? うそ、マジかよ!」と後から気づいた人
→ それが正しい理解です。違和感を超・理詰めスルメイカするのがZAPISTEの真意!
次回から第三章、本格スタート!
頭おかしい、だけど全部伏線です(たぶん)!
ブッ飛んでいきましょう!!!
ZAPISTE! ヅァーピシツーテ! Go to the moon!
ZAPISTE! スルメイカ! ゲソゲソゲソ!!
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