第19話 ビリビリズドーンとお祭り
黒電ナマズノカミと金色ウナギドラゴンの激突は、未だ決着がついていなかった。
ガリガリッ! バチバチバチィッ!!
二匹は噛み合い、互いの体にダメージを与え続けている。
まさに死闘――しかし、どこか神々しさすら感じさせる光景だった。
「うーん、ちょっと様子を見てみたけど……拮抗してる、かな」
俺は遠巻きに戦況を見つめながら、思案する。
「スキルを使えば、一撃で終わるとは思うんだけど……あのウナギドラゴンの頑張りを無駄にしたくないんだよね」
どうしようかな?
そうだ! それなら!
創造で、バフ系の魔法を作ろう!
「【ルミナス・スピリット】!」
新スキルが発動すると銀色の光が天から降り注ぎ、ウナギドラゴンの全身を包み込んだ。
「キュオオオオオオオオオン!!」
その瞬間、ウナギドラゴンの頭上に――赤、緑、そして青の光の球が混ざりだすと!
一つの巨大な虹色の玉になっていた。
(何それ、元気玉じゃん!)
【RGB】(レアグレートボール)は、眩い光の流星となってナマズノカミに向かって放たれた。
――ズドォォォォォン!!
ナマズノカミは巨大な光の玉に飲み込まれ、その体は細かい光の粒子となってキラキラとウヨンツラに戻っていく。
「グオオオオ……オ……」
その声を最後に、黒電ナマズノカミは完全に消滅。
この戦いは、ウナギの勝利で幕を閉じたが結局、カルト教団は何がしたかったのか、俺には、よくわからなかった。
数日後、俺はコビア伯爵邸の玉座の間にいた。
今回の件で三つの手柄を評価されたらしい。
一つ、食料支援。
二つ、イローナの救出。
三つ、ナマズノカミ討伐への貢献。
そして、その報酬として――俺は「男爵位」を授かった。
(マジか。俺、貴族になっちゃったよ。この国、大丈夫かな? 国家転覆できそう……しないけど)
しかもこの世界の貴族には「特別選挙権」があるらしく、一票が百票分の力を持つらしい。
ヒエラルキーすごいな!
その日の夜は、街を挙げてのお祭りが開かれた。
「すごい人混み……」
俺は、そう言いながら、屋台の並ぶ通りを歩いていると、ある果物が目に入った。
「あれって……リンゴ? あっ! 思い出した、アポーの実じゃん!」
しかも飴でコーティングされている。
「おっ! 嬢ちゃん、食べるか? これは一個110タリカだ!」
(ジョークだろ! 俺、貴族で英雄なんだけど? てか、一万円超えじゃねーか! 高っ!)
あれでも砂糖は、高いんだっけ?
でも、なんか気になるな。
「……一個ください」
「まいど〜!」
渡されたアポー飴は、思ってたより小さかった。
ガリッ! シャクシャク!
「……あっっっっっっっっま!! ってか、酸っぱ!? なにこれ、梅干しみたいなんだけど!?」
「ク、クレイシア様! 大丈夫ですか?!」
涙目になった俺にルリトが心配して聞いてくる。
ただ、そんな俺たちをよそに、セリナが何かに気づいたのか、指を差して口を開いた。
「あっ! あの人!」
指で差された所を見ると!
そこには、白杖を逆さに持ち、バランスを取りながら歩く老人の姿があった。
(あの人、……頭おかしくなっちゃったのかな……?)
一応、声かけておくか。
「あの! ウィスティ・コビアという人は、実在したんですね!」
「ああ、そうじゃよ」
「どうして、あなたは騙されなかったんですか?」
隣にいたルリトが聞いた。
「騙される? 何のことか知らんが、ワシは目が悪くてな。あの石碑の文字なんぞ、ずいぶん前から読めなかったわい」
「なるほど……見える者ほど、見えなくなる……か」
オル爺が目を細めて、ボソッと呟いた。
「オル爺、どうしたの? 目が見えないの?」
セリナが無邪気に聞くと、オル爺は固まった。
(オル爺、嫌われてるな……)
「みんな! そろそろ踊りが始まるよ! こっちに来て」
遠くから、イローナが軽い着物姿で手を振っていた。
ニコニコ笑顔でデカい胸を揺らしながら、コチラを誘ってくる。
戦いが終わって、ようやく訪れた平和の時間。
俺たちは、笑い合いながら、祭りの中心へと歩き出す――。
――――――――――――
読んでくださってありがとうございます!
今回は、ウナギとナマズのビリビリズドーンとお祭りなど、カットシーンが多くて、カオスになってますが……
このあとも「いい意味で」頭おかしく(?)突き進んでいきます!
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