第11話 ルリト無双と陰謀論?
乗合馬車の中、のどかな揺れの中で、俺たちは桃を食べていた。
セリナがうれしそうに笑いながら果汁をぬぐい、オル爺は種を煎じたら薬になると語り出す。
ルリトも、静かに桃をかじっていた。
やがて馬が休憩のために、湖のほとりでしばらく休息を取ることになり、馬車を降りる。
そのときだった。
ルリトが、ふいに馬車から飛び降りて、一番前に出ると!
手にはクナイを持ち、誰もいない空間をじっと睨み、構えを取る。
次の瞬間――
「チッ! バレたか、俺たちは――」
ドサッ!
盗賊団の一人が声を上げた瞬間、気づけば、その盗賊の胸にクナイが突き刺さっていた。
(え? ルリト、いつ投げたの?)
「一人目」
ルリトが冷たく呟く。
「小僧! 貴様ぁッ!」
盗賊たちが叫ぶが、ルリトは表情一つ変えず、次々と手裏剣を投げ放つ。
その軌道は、常識を逸していた。
魔力で操られた複数の手裏剣は、空中で方向を変え、盗賊たちに次々と命中していく。
ドサッ! ドサッ! ドサッ!
「二人、三人、四人目――」
ルリトが淡々と数えるたびに、盗賊の人数が減っていく。
盗賊たちはついに恐怖に駆られ、ある者は背を向けて逃げ出し、また、ある者はその場で命乞いをし始めた。
「頼む! 殺さないでくれ!」
「話を聞いてくれ!」
「嫌だ! 死にたくない!」
「【瞬間移動】」
ルリトがふっと消えると!
次の瞬間、ある盗賊が逃げた先に、彼は立っていた。
「ちょこまかと……面倒だな。一気に片付けてやる!」
その目が、虹色から銀色に変わる。
「ザピステ……ウインド……アイシ――【ブリザード】」
空気が瞬時に凍りつく。
吹雪が巻き起こり、逃げ惑う盗賊たちは、一瞬で氷像になった。
そして――バキバキバキッ!
砕け、粉々になった。
「……」
あまりのことに、俺もセリナも、言葉を失った。
「ルリト、すごい!」
セリナが拍手すると、オル爺も頷く。
その後、馬車は再び走り出し、開けた平地の向こうに、奇妙な遺跡群が姿を見せた。
「あれを見ろ! 互い違いの階段状の建造物……あれはタルタリア帝国の飛行船、またはUFOの発着場だ!」
オル爺の瞳が赤く染まり、瞳孔がパカッと開いていた。
完全にキマってる。
「あっちのシマシマの禿げ山は、メルトした古代建造物だ。フリーエネルギー装置だったかもしれないぞ!」
「お前は、バカか! あれは地層だろ!」
とオルハフさんがツッコむ。
「よく見ろ! いきなり地層があんなふうに現れるか? それにあの発着場の精巧さ……明らかに人工物だろうが!」
言い争う二人を見ながら、俺はその遺跡群を見つめた。
(……確かに、あれは人工物だな……)
そして、更に進むと奥に街が見えてきた。
「おーい! そろそろ、首都近郊のコビア市に着くぞ!」
オルハフさんが乗客にそう伝えた。
その街を見てみると!
その街の外壁の外の農地はボロボロに荒らされ、作物は踏み荒らされていた。
おそらく、農作物は全滅していると思う。
街に入っても、人々の顔は暗く、活気がなかった。
(……この街で、一体何があったんだ?――)
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