第一章 フラット

第1話 金髪美少女エルフと双頭龍 ―神話は、嘘から始まる―

 作戦名:クココ作戦

近況ノート、タイトル「ZAPISTE襲来イベント」


???「これは、時空を歪めたライブ的演出だ!」


 誰か……近況ノート見て!

やっぱり、やめて……恥ずかしいから。


 これもう、黒歴史確定だな……

2025/08/10 追加

――――――――――――――――――――


 ……これは夢か、それとも――死後の世界?


 熱くもなく、冷たくもない。

ただ、全身が水の中に沈められているような、奇妙な違和感だけが残っていた。


 ――気が付くと、俺は古びたレンガ道の上にいた。


 ひび割れた隙間からは、雑草が生えている。

風に吹かれてユラユラ……俺もクラクラ……頭、痛い。


(……クソッ! ここどこだよ。俺、さっきまで仕事してたはずなんだが?)


 頭を押さえながら立ち上がると、すぐ近くに妙にツルツルとしたグレーの石碑があった。

やけに光沢があって、まるで……鏡みたいだ。


 ふと、その石碑に反射した自分の顔を見て、俺は凍りついた。


 ――腰まで伸びた銀髪。

宝石みたいなアメジスト色の瞳。

透き通るような白い肌。


 一瞬、言葉を失った。

まるで神話から飛び出してきたような、白くて軽やかな神聖な衣装――


「これ、俺が育成したチートキャラのクレイシアじゃん! 声、高っ!?」


 胸に手を当てると、やわらかい感触が返ってくる。

それだけじゃない。


 腰も細いし、肌なんかも、なめらかだし――


「う、うそだろ!? ちょっと待て! これ……TS転生じゃねーかっ!?」


 テンプレか!? いや、夢か!?

でも妙にリアルすぎる!

混乱のあまり、その場で頭を抱える。


「……くそっ、こういう時は……そうだ! ステータスッ!」


 反射的に右手を前に突き出し、叫んだ。

シュウゥゥン……という音と共に、目の前に淡い瑠璃色のウィンドウが表示された。


 それは、どこか見覚えのあるステータス欄。


 レベル:9999

HPとMPは桁外れで、スキル欄に至っては、下にスクロールしても終わらない。


「うわっ……俺、ガチのチートじゃん……」


 ――でも、今はそれどころじゃない。

現実味がなさすぎて、俺の脳が吐きそうになってる。


 そこにはゲーム時代とまったく同じ項目が並んでいた。

……ただ、ひとつだけ。

 

 明らかに、場違いな項目があった。


【称号:女神(新しい主神(仮))】


 ああ、はいはい。そういう感じね。

――って、どういう感じ?


 異世界で、女神で、主神(仮)って……テンプレにしても頭おかしいだろ!

マジで! 主神(仮)とか不穏なフラグが鉄塔のごとく直立してない!?


 ステータスを閉じ、再び石碑に目を向けると――

そこには、アルファベットで刻まれた謎の文字があった。


「TARTARIA(タータリア)って、ナニ?」


 初めて見る単語。


 けれど、なぜか――

懐かしさと、ゾクゾクするような感覚が背中を這い上がり、首筋をくすぐられる様な感覚に襲われた。


 そして、手前の台座のような部分には――

何かが“置かれていた”ような窪みが見える。


「……絶対ここ、重要なアイテムがあったよね? なんで無いの!? クソがっ! お約束どこいった!?」


 俺はそっと、その窪みに触れた。

台座はひんやり、ツルツルしていて……なぜか、心の奥がザワザワする。


 辺りを確認してみると、奥には青い海と果てしない地平線。

そして、反対側には高い山脈と鬱蒼とした森林が広がっていた。


「……よし! まずは、人を探してみるか」


 空を飛べば、何か見えるかもしれない。

スキル「重力操作」を使った瞬間、体がふわりと浮き上がる。


 そして、空を滑るようにしばらく進んでいくと――

眼下には、木々の合間に野生ウサギの群れがいて、のどかだった。



「誰か、助けてぇぇぇぇっ!!」


 女性の悲鳴が聞こえてきた。


「っ!」


 声の方へ急ぐと、金髪の美少女エルフが、必死に逃げていた。

その背後からは、巨大な銀色の双頭龍ニグドラが、爪を伸ばしながら、地響きを立てて捕まえようとしていた!


 美少女エルフがニグドラに捕まって気絶してしまったので、とっさにスキルを使う。


「間に合え! レーザービーム!」


 ビィィッと光線がニグドラのお腹に当たり、ジュウウウッと音を立てて煙を上げる。

同時に、エルフの少女がフワリと落ちていく。

金の髪が空中にひらひらと揺れて、美しい――けど、それどころじゃない!


「重力操作!」


 すうっと落下速度が弱まり、美少女エルフをそっと地面に戻した。


「ふぅ……っと、ヤバッ!」


 ニグドラがこちらに突っ込んできたので、とっさに避けると!

ドゴォォォンッ!


 背後で爆音が鳴り、ニグドラが着地した地面には、デカいクレーターができていた。


「ガアアオオオオオッ!!」「ギャアアアアアッ!!」


 ニグドラの二つの巨大な口が開き、同時に炎を溜めた。

――次の瞬間、【ダブルファイアブレス】が周囲の空気を燃やし尽くすようにして、こちらに襲いかかってくる。


「くっ、速っ……!」


 重力操作で逃げるが!

炎がすぐ背後まで迫ってきていた。

そして!


「やべ、間に合わ――」


 ボウッ、と炎が全身を包んだ――が、


「……あれ? 熱くない……なんてな全然、効かねえよ!」


 ふう……危ない危ない。

やっぱこのスキル、チートだな。

――【魔法攻撃無効】


 それがなかったら、今ごろ俺、丸焼きだったな。

そして、もう一つのスキルを発動させる――


「返してやるよ! 全反射【フル・リフレクト】!」


 ギラァァァッ!!

全身が光り出して、ニグドラの炎がそのまま反射されて、二つの頭に直撃した。


「「ギャアアアアアッ!!」」


 バキバキと鱗がひび割れ、ジュウウウッと肉が焦げる匂いが広がり、巨体が崩れ落ちた。


「ふぅ……チート様様だな」


 俺はその場で結界を張り、気絶している美少女エルフが起きるのを待つ事にした。


 それから、しばらくして、美少女エルフがゆっくりと目を開けた。


「う……生きてる……?」


 目をパチパチさせ、こちらを見て驚く。


「あっ! あなたが……助けてくれたんですか? ありがとう、ほんとに!」


「どういたしまして。私はクレイシア。あなたの名前は?」


「あ、私、セリナ。さっきは助けてくれてありがとう、クレイシア!」


 笑顔でお礼を言われ、なぜか胸がドキドキした。


「そういえば何で双頭龍ニグドラに襲われてたの?」


「それは爆裂もろこしから逃げてたら、ついうっかり入った所が縄張りだったみたいで……」


「そうだったんだ……立てる?」


「あ、えっと……ごめんなさい、足を挫いちゃった……すぐには動けないかも」


「仕方ないな……ヒール!」


 俺はセリナの手を握り、ゆっくりと起こす。


「……どう? まだ痛い?」


「すごい! 全然痛くない!」


 ピョンピョンと跳ねて喜んでいるセリナ。


「ねえ、近くに町とかある?」


「えっとね、スエイエデ温泉郷があるよ!」


 セリナがキラキラとした瞳でこちらを見てくる。


「そ、そうなんだ……」


(温泉……女湯……いや待て、俺、TS転生してるじゃん……)


「これって、異世界版LGBT法案件じゃねーか……!(この世界、頭大丈夫か?)」


「? 今、何か言った?」


「あ、いや、なんでもないよ!」


 セリナが笑顔で手を引く。その手は小さくて温かかった。




――約五千年前


 光の輪を戴く主神。

銀鱗に黒い瘴気をまとう邪龍。


 光と闇がぶつかり合い、大地を抉り、建造物を溶かし、空を裂いた。


 主神の閃光は触れたモノを“消し”、

邪龍の闇炎はあらゆるモノを“溶かす”。


 やがて邪龍が地に伏す――が、油断した刹那、爪が主神の胸を貫く。


「……異界より来たる者が……お前を滅ぼす……」


 主神は光に包まれ、消滅した。

その瞬間、戦場に静寂が落ちる。

そして――邪龍の頭上に光を99%吸い込む漆黒の輪が浮かんだ。


 すべての嘘は、ここから始まった――



※ZAPISTE経典・断章引用

 観測者思考変換装置について


 それを目にした者は、理解を試みると同時に理解を拒む。

その繰り返しにより、既存の認識は解体され、ZAPISTEの理が流し込まれる。


 装置の部品は、言葉、間、誤訳、あとがき、沈黙、そして笑いである。


 それを読んだ瞬間、あなたはすでに観測者ではなく、観測される者である。


―――――――――――――


あとがき


 ようこそ。

嘘と狂気の神話へ――


 お読みいただき、ありがとうございます……?(いや、読んでる人いるのかこれ?)


 本作は、「TS転生チート×陰謀論×神話改ざん×全反射」という、

異世界ファンタジーの皮をかぶった情報爆撃機(B-29)のカオス物語です。


 第一話から情報量が多く、設定が意味不明、

そしてキャラが全力でツッコミながら物語を進めるという、

読者に優しくない仕様でお届けしています。


 でも安心してください。

これは**“意味が分かるための物語”ではなく、“観測されるための物語”**です。


 ZAPISTE!!! ヅァーピシツーテ!!!


※この物語は、進めば進むほど狂っていきます(たぶんね……?)


 最後に出てきた漆黒の輪は「黒色無双」をイメージしています。

光の99%を吸収し、残り1%すら歪ませるヤバい黒。


 実物はマジで目がバグります。買うと高いです。

……でも、俺がこの黒を使う日はたぶん来ません。


 なぜなら、この作品が既に“真っ黒”だからです。


追記


 このあとがき自体が、ZAPISTEの一部です。

書いた瞬間に“意味不明”になったので、正常に機能している証拠です。


 俺の性格変わってて草www


修正日 2025/08/09

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る