第八話 魔銃

カイは災厄獣の倒れた所に向かい、災厄獣の魔力結晶を拾い上げる。 


「これが魔力結晶か……」


黒く輝く魔石の中心に翡翠色の輝きを放つ、不思議な魔石だ。


(ヴィル・フォリティスでも、魔銃開発に使ってたけど、街の街灯のエネルギーに使われてるんだったっけ……)


「ぐえっ」


「よかったぜカイ!お前雷魔法使えたのかよ!」


いきなりアルドに肩を組まれてカイは咳き込みつつも、満面の笑みのアルドの方を向く。


「僕の魔力量じゃ、ヴィアンティカの人に比べたら、攻撃にはあまり役に立ちませんから、あんな感じでアレンジしました」


「そうか!!流石だぜ!!リクトもナイスだ!!お前の銃も凄かったぜ!」


「……フン、名前を気軽に呼ぶなと言いましたよね、ヴィアンティカ人」


リクトはアルドの方を向かずに、スナイパーライフルを背負い直して、メガネをくいっと上げる。


「……お前ら、あまり油断するな。さっきの災厄獣は、まだ弱い方だ」


フォルスの言葉にカイは驚く。


「……あれでまだ弱い方なんですか?」


「……あぁ、まだ子供の……いや、小さい個体だ」


その言葉にカイは考え込む。


(だったら、これより強い災厄獣が現れたとしたら、今の連携がまともに取れない状況だと勝つどころか生きる事すら難しいんじゃないのか……?)


「カイ、その結晶を渡してくれないか?」


「え?はい、どうぞ」


カイは戸惑いながらもフォルスに結晶を渡す。


フォルスは魔力結晶をジッと見つめた後、結晶を持った手を上に上げて地面に叩きつけた。


「……無理か」


「ちょちょ!何してるんですか!?」

 

カイは魔法結晶を拾い上げる。傷は付いていないようだ。


「何やってんだフォルス?急に結晶叩きつけて。壊れたらどうすんだ」


「……何でもない」


「……そうですか」


これ以上話しても、答える気のなさそうなフォルスを横目に、カイは結晶を持ってきていた皮袋を取り出し中に入れる。


ふと、フォルスの方に顔を向けると、森の奥の方を睨んでいた。


「……また災厄獣が寄ってきている。さっきの戦闘音で寄ってきたのかもしれない!しかも複数体だ!」


「はっ、だったらまた倒せばいいだけだろ!」


「馬鹿ですかヴィアンティカ人!音に釣られて近づいてきたのなら、他の災厄獣もよってくる可能性があるんですよ!?」


「モォォォォォォ!!!」


霧を突き抜けて突進してきた災厄獣を4人は横に飛んですんでの所で回避し、地面を転がりながらも体勢を立て直す。


四足歩行の災厄獣は木に衝突し、何本もの木が粉砕された。


「何だ?今度は牛か!?」


「しかも、牛は牛でも闘牛じゃないですか!?」


カイとガルドは先程の熊の災厄獣よりも一回り大きい災厄獣に混乱する。


「モォォォォォォ!!!」


牛のような災厄獣は雄叫びを上げ、獲物4人を見据える。


「……まずい!今の音で他の災厄獣もこちらに向かって来てる!逃げないと!!」


「分かりました!2人も早く行きましょう!」


カイは後ろの2人も走り出したのを見て前を走るフォルスに続く。


(木が邪魔で走りずらい……!)


フォルスが歩きやすい道を選んでくれているとは言え、平地と比べれば遥かに進むスピードが落ちている。


「フォルスさん!そっちは安全なんですか!?」


「今行ってる先に災厄獣は居ない!」


「プギィィィィィ!!」

「モォォォォォォォォォォ!!!」

「キィィィィィィ!!!」


「…….ッ!不味い、鳥の災厄獣まで現れたぞ!」


先程の牛の災厄獣に加え、豚のような災厄獣と、鳥の災厄獣が4人を追って来た。

その災厄獣の行手を阻む筈の木は、その災厄獣の巨大を持っては何のストッパーにもなっていない。


(……使うなら今しかないか)


カイは背中に背負った魔銃に手を掛ける。


「アルドさん、リクトさん!殿は僕が務めます!」


カイは魔銃を構え、走るスピードを遅めて、アルドとリクトの後ろを追うように走る。


「大丈夫なのかよカイ!!」


「大丈夫にして見せます!!」


カイは後ろを向き、3匹の災厄獣を見据える。


(一番面倒なのはあの鳥の災厄獣だけど……とりあえず様子をみよう)


「《地雷》!」 


牛の災厄獣の通る地面に感電する罠を設置する。


「モォォォォォォ!!」


設置した地雷を何なく突破してきた災厄獣にカイは焦る。


「チッ……魔力が少なかったか」


走りながらで地面に込める魔力は、災厄獣の足を止めるには、至らなかったようだ。


(…….なら一か八かで賭けるしかない)


カイは空を飛ぶ鳥の災厄獣を見据える。

あれを撃ち落として奴らの道を塞げばすぐには追ってこれないだろう。


カイは魔銃に魔力を込める。込められた魔力は電気となって魔銃を走り、銃口へ一点集中して行く。


カイは立ち止まって振り返り、鳥の災厄獣に狙いを定める。


形態選択フォーマ・オプターレ審判ユーディキウム』」


(今持ってるありったけの魔力を込めた。これで決める!)


魔銃から放たれた雷光は風を裂き、鳥の災厄獣の脳天に命中した。


「キィィィィァァァァ!!!」


感電した鳥の災厄獣は、翼を広げたまま、地面に落下する。


「モォ!?」

「プギィ!?」


地面に落ちた鳥の災厄獣に足を引っ掛けて牛と豚の災厄獣も転倒する。


「よっし!上手く行った!」


カイはそれを尻目に、前へと行く3人を追って走り出した。


(あの銃……)


リクトの視線は、カイの手元にある魔銃に視線が向けられていた。

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