この圧倒的な孤独と絶望。狂っているのは『私』か、それとも『世界』の方か
- ★★★ Excellent!!!
読む手が止まらない。まさにその言葉がぴったりです。
高校生の弥歌は、ある時に同じ「4月13日」がループし始めた状況に陥る。もちろん、「その事態」を記憶しているのは自分だけ。
親友の成花に相談するも、やはり次のループ時には彼女の記憶からは異変について話したことは完全に消え去っている。
そして、弥歌の前に姿を現す謎の存在。
不気味な高笑いをし、少女を「芸術品」として改造する。弥歌は一人の少女が「歯車」に改造され、ずっと何かの装置として稼働させられているのを見る。
このループの正体はなんなのか。そして、歯車に改造された少女「のの」は何者なのか。
弥歌の記憶からは消えているが、彼女はどうも「のの」とはどこかで知り合っているらしい。自己紹介をされてもいないのに、なぜか彼女の名を知っている。
残虐にして耽美な世界観。そして、謎が謎を呼ぶ状況。
読み進めるごとに、物語の世界にある「秘密」の正体はなんなのか、弥歌たちの運命はどうなってしまうのかと、続きが気になって仕方なくなります。
同じ「4月13日」が繰り返されるが、ループが繰り返されるごとに弥歌の見える世界には変化も生じていく。
歪み、崩壊を始めていく世界。不気味な肉塊のように変貌しつつも、ごく当たり前に生活する人々。
これは、弥歌の見ている幻覚なのか? それとも、人智を超えた何かの法則に彼女は巻き込まれているのか?
弥歌の抱えている事情や、彼女自身の「特性」なども見え、ただ異変に巻き込まれているだけの無垢な存在ではないのもわかってくる。
ループから脱出することが当初の目的だったけれど、果たして「4月14日」が訪れることは弥歌にとって幸せなことなのか、だんだん確信が揺らぐようになる。
この圧倒的な孤独と絶望の果てに、弥歌が目にする「真実」とはなんなのか。
作り込まれた世界観と人物造形、そして先の読めない展開。H・P・ラヴクラフトの「クトゥルー神話」の世界観を思わせる狂気と隣り合わせの感覚。
謎と恐怖と狂気と耽美。そして少女たちの切実な想い。様々な感興が読者の心に流れ込み、作品世界の虜になることは間違いありません。