魔王少女は旅に出る

なべしき

第1話 

「あ゛あ゛あ゛!もういや!!」


南西部で発生した戦闘の処理、不穏分子の調査報告、etc...


毎日毎日山のような書類と向き合う日々。

休戦の提案を受け入れ早20年。

あれから大きな戦闘は発生していないが、小規模な小競り合いが続いている。


っていうかなんで休戦したのに戦闘発生するんだよ……。

向こうは「あれは軍ではなく賊だ」って主張してるから対応面倒なんだよな……。

報復したら「魔物は危険だ!」とか言って全面戦争になるから

こっちから手を出すわけにはいかないし。


「書類仕事って魔王らしくないよぉ……」

「我慢してください、魔王様。コーヒーいりますか?」

「あー、ありがと。お願い。……久々に暴れたいなぁ」


最後に誰かと戦ったのは……勇者クンの時かぁ~。

あのときは楽しかったなぁ。


「どうぞ、熱いのでお気をつけください」

「砂糖は何杯入ってる?」

「いつも通り3杯です」

「ん、ありがと」


コーヒー。我が魔国の特産品の一つだ。

仕事にはこれがないとね。苦いものは好きじゃないけど癖になるんだよ。


「よし、執務終わり!……もう夜か」

「お疲れ様でした」


最後の書類にハンコを押して閲覧済みと書かれた箱に放り込んだ。

すでに日は落ち、3つの月が見えている。


「んー、ルーちゃんももう休んでいいよー」

「ありがとうございます。ところで魔王様、ご夕食はいかがいたしましょう?」

「食欲ないからいいや。調理担当には謝っておくよ」

「……無理をなさらないようお願いします」

「わかってるよ……」



場所は変わり、魔王の自室。

一人用とは思えないほど広いベットの上で横になっていた。


「確かに最近身体がボロボロだ。……昔みたいに自由に過ごしたいな」


魔王になる前は自由だった。色んな場所へ行ったり、喧嘩を売ったり買ったり。

好き勝手に生きていた。わけあって魔王となり、ほぼ全て制限され最近は室内に篭りっぱなし。

あの頃に戻りたい……。


……ここから抜け出せばいいのでは?


「そうだよ!ここから抜け出そう!みんな優秀だから私一人いなくなっても問題ないよね!」


いやー、何で今まで思いつかなかったんだろう。

どこに行こうかな?いや、世界を回るか!

そうと決まればさっそく準備だ!今夜出るぞ!


「武器は一つ倉庫から拝借していこう。魔王剣は……流石にまずいか。相棒にしよう」


気配を完全に遮断し、部屋から出る。

誰にも鉢合わせないよう慎重に進んでいく。


「門番はどうするか……」


倉庫の扉の前には二人のガーディアンが立っている。

んー、でも私魔王だし、ゴリ押しで行ってもいっか!


消していた気配を戻し、扉に向かって足をすすめる。


「っ!何の用でしょうか、魔王陛下!!」

「ちょっと野暮用。気にしなくていいよー」

「「はっ!」」


よーし、堂々と入り込めたぜ。



この倉庫には剣や防具などの装備が置いてある。

さらに、奥の部屋には魔剣などの特別なものが保管されている。


また最強で最恐の究極兵器であり、魔国の象徴である魔王剣がこの場所に封印されている。

これはさすがに持ち出したら問題になるので今回はスルー。


数ある魔剣の中からかつての相棒を探し出す。

ここには魔剣が複製品レプリカを含め数十本あるそうだ。


「お、あったあった」


昔使っていた相棒の魔剣「レーヴァテイン」だ。

部屋のかなり奥のほうで厳重に保管されていた。

他の魔剣とは異なり、直線を基調としたシンプルなつくりをしている。


魔剣は使用者に合わせて形状が変化する。また、魔剣は使用者に似るという話もある。

……私ってそんな特徴ないのかな。出会ったときはあんなにも禍々しい見た目だったのに。


まあいっか。とりあえず≪収納≫に入ってもらってっと。


「んじゃあ、おつかれ~」

「「はっ!ありがとうございます!!」」


門番二人に挨拶をして、部屋へ戻る。

特に荷物は持って行かない。ある程度の路銀で十分だね。


「……この格好は目立つよね~」


今着ているのは魔王っぽさのある独特な軍服。こりゃ目立つ。

クローゼットを漁った結果、あまり目立たない普通の服とフード付きのマント?を着ることに。

顔は魔術で髪と瞳の色を変えればオッケーだね。


あとは適当な袋にポケットマネーを入れ≪収納≫へ。


「では行こう……自由の旅へ!!」


窓を開き、その身を放り出す。

そのまま飛行魔術で魔王城から飛び去って行った。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


はい。というわけで新作です。

ふと思いついてしまい、我慢できずこうなりました。

一応メインはあっちなのでこっちはのんびり気が向いたら進めます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る