舌にのせて使うインターフェース「クトゥルフシード」。長時間の労働のせめてもの息抜きにと、主人公は「クトゥルフシード」を使う。
それは新鮮な体験だった。舌から映像が伝わり、舌から爽快感が伝わる。味わうようにスリリングな体験にのめり込んでいった。
そんな中、舌の体験により、一人の少女と出会う。それをきっかけに、舌の中でグロテクスな経験をするようになり……。
舌から味わう、映像体験、敵を倒した快感、美少女との出会い。本編を読むだけで、この奇妙な体験を現実のもののように感じられる筆力がある。しかし、それは決して甘美なものではない。
架空の世界にのめり込むということは、まだ見ぬ世界を覗いているということなのだ。あなたは見返してくるその巨大な視線に耐えることができるだろうか。
クトゥルフ神話が描くような宇宙的恐怖を、舌で味わうメディアというアイデアにより新境地に導く新感覚ホラー。この小説は気軽に味わえる非日常などでは決してない。覚悟のうえで是非ご一読を。