手紙

蒼真への手紙

……あんた、今さらこんなの読んでるってことは、例の件、まだ引きずってんの?

別に、心配してるとかじゃないし。ただ、こっちだって後味悪いまま終わるの、イヤなだけ。誤解されたままって、なんか…ムカつくし。


あの時のこと、ちゃんと覚えてる?

教室で、あんたが「例の写真」のこと口にしたあの日。私、まさか、あんたがあんなふうに問い詰めてくるとは思わなかった。あれ、誰かに言われたんでしょ? 「沙月がやった」って。


……あのね、やってないって言ったら信じるわけ?

言い訳っぽくなるから本当は言いたくなかったけど、黙ってたら、あんたの目がどんどん冷たくなってくのが分かって……ああもう、うるさい、こっちはちゃんと筋通したかっただけ!


あの写真、盗まれたって言ってたじゃない? あんたの机の中から。

でも、私、知らなかった。あんな写真が存在してたことすら。ほんと。

でも、知ってる。あれ、撮ったの……アイツだよ。


……ねえ、思い出して。

一ヶ月前、放課後、あんたが居残りしてた日。

私はたまたま教室にノート忘れて戻ったんだけど――見たんだよ。あんたの机に、そいつが手ぇ突っ込んでるとこ。


それを止める勇気なんて、私にはなかった。

声をかけたら、たぶん、私まで巻き込まれるって思った。

だから黙ってた。ずっと、黙ってた。


でもそのせいで、あんたは私を疑った。

「お前の字に似てる」って、あのメモを見せてきたときの顔、今でも覚えてる。

あんな目、二度と見たくないって思った。けど……何も言えなかった。


あんた、いつもは偉そうなくせに、ああいうとこだけ繊細なんだから。

こっちが何か言う前に決めつけるし、勝手に落ち込むし……はぁ、ほんと面倒。

……でも、あの目は、本気だった。


だから今さらだけど、言う。

あたしじゃない。本当に違う。

そりゃ、あんたのこと気にしてたから、変なとこで見てたり、知ってたりするけどさ。

それとこれとは、別だから。


あの写真を渡した奴は、たぶん、あんたの「真っすぐなとこ」が気に入らなかったんだと思う。

目立ってるやつを引きずりおろすの、好きなやつっているじゃない。

あんた、いつも前向いてるから、誰かが妬んでもおかしくない。


……あー、くっそ、何書いてんだろ。

こういうの、ほんと性に合わない。

そもそもこんな手紙、送るかどうかも分かんないくせに。


でもまあ、仮にこれをあんたが読んでるとしたら。

その時は……少しだけ、信じてくれてもいいかなって。思うだけ。


……ん? 何、最後の一行、泣きそう? 笑ってんじゃないわよ。

……あたし、別に優しくなんかしてないんだから。



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