第3話 1年生冬〜2年生6月
1年生の冬頃。
バスケに対する気持ちが強くなってきた。
バスケの面白さを知り、少しずつフェイクや
ドリブルのスピードの緩急を極めていった。
奈々「先輩、どうやったら味方のパスが通りやすくなりますか?」
先輩「うーんとね、奈々はフェイクをやりすぎ。やることはいいんだけど、それでパスが少しずれたりしているからもっと正確にパスしてもいいかな。でも、1年生の中で奈々はうまいから期待してるよ。この間も試合で点入ってたし。」
奈々「わかりました!ありがとうございます!あの試合は、結構攻められて体力がもたなそうだったんですけど頑張れました。」
先輩「ひとつ、いいこと教えてあげる。」
奈々「なんですか?」
先輩「奈々はもっと周りを頼っていい。自分でなんとかしようとしすぎてる。それが試合で勝てない原因にもなってる。」
いつも2年生の練習試合の後は、1年生の試合。
奈々は両方に出ていて体力が尽きることが多かった。2年生の試合では、部長がいいパスをしてくれてそれを受け取ってシュートするだけ。
しかし、1年生は全員初心者。ちょうどいいパスをできるものなど誰1人、いない。
だから奈々は苦戦していた。2年生の試合でできることが私の学年の試合だとできない。
奈々「もっと、周りと連携をとってパスを繋げる動きをすればいいんですかね?」
先輩「そうだね。2年生の試合と比べてうまくいかない。そう思う部分もあると思う。でも、私たちは支え合って築き上げてきた信頼があるからパスやリバウンドがシュートチャンスに繋がる。奈々周りとの連携を大切にすれば、チャンスは来るよ!」
奈々「ありがとうございます!頑張ります!」
奈々はこの日バスケは周りがいてできるものだと学んだ。
時は2年生の4月。
奈々たち1年生は進級して2年生に。
後輩もできる年になってしまった。
仲間-「やばい。もう2年生だよ?どうする?後輩できちゃうよ?うますぎて抜かされたらどうする?終わりだよ〜?!」
仲間-「うるさいって。耳元で叫ばないでもらえますか💢」
仲間-「大丈夫だよ。私たちも1年間頑張ってきたんだし。簡単には抜かされないよ。」
仲間「そうかなぁ?」
-確かに頑張ってきたけど、安心してはいられないな。抜かずに頑張らないと-
そんなこんなで新入生歓迎会。
3分間で発表。
バスケ部は3つのゴールを使って、
ゴール下シュート、レイアップシュート、アウトサイドシュートに分かれシュートする様子を新入生に見せていた。その間に部長と副部長が女バスの様子を説明していく。
いよいよ最後の見せ場。
部長「ダッシュー!」
全員「はぁーい!」
バスケ部は毎回最後の練習でダッシュをする。
5メートル先までいく、スタートラインへ戻る。
10メートル先までいく、スタートラインへ戻る。
15メートル先のラインまで走り切る。
この行ったり来たりの繰り返しはバスケでは必要なフットワーク。だがやってる側は割ときつい。これを13秒以内に走り、5セットやる。
新入生の前でやるのは緊張したがとても楽しかった。
-これをベースに来年考えないと。自分達だけでうまくいけるかな?-
奈々は3年生の先輩がいなくなってしまうことに少し不安だった。
1年生は10人入ってくれた。結構入ってくれたと思う。体験したことがない後輩という存在にワクワク感と緊張感が入り混じっていた。
-後輩と先輩に挟まれている時期が1番大変である。-
監督「奈々たち3人は1年生にハンドリング教えて。んでこっちのチームは〜。」
監督「奈々ー!ハンドリングは他の人に任せて3年生の試合に混じってくれ。」
監督「次奈々は2年生の試合で」
奈々「教えることに慣れてないし、なんか後輩の前って緊張するし、先輩の試合にも出ないとだし、自分の学年の試合も出なきゃだし、
つぅーかぁーれぇーるぅー!」
ありがたいけど、忙しいバスケの日々を過ごしていた。
6月
そんなこんなでもう明日は先輩の6月の学総。ベンチへ入れるメンバーは全員で15人。先輩は9人だったので、私の学年のメンバーは6人出た。当然奈々もメンバーにはいれた。今まで緻密に頑張ってきた成果だろう。悔し涙をする人もいた。いつの間にか私の学年もライバル心を燃やす者が増えていた。
「こんなにバスケに熱い仲間なら、自分たちの時代も良いチームを作れるだろう」
そう安堵していた。
大会当日。
場所は山皿中で行われた。一回戦相手は同じ市内の中学校。原隼中。ライバル校だ。相手も同じくらい強く戦ってみなければ結果は分からない。手を抜けない。そんな学校だった。
ビー。
試合が始まった。
ほぼ互角の戦いだった。点を入れては入れられの繰り返し。
「なんとか勝ってほしい」
そう思っていたとき、センターの先輩がファールをしてしまう。奈々に周りを頼れと言ってくれた先輩。ポジション上、相手のボールを手、もしくは体で止める役割なので攻めてきたオフェンスにぶつかってしまうこともある。
ピー、白、9番、ホールディング、エンドから。
ピー、白、9番、プッシング、フリースロー2本。
「やばい。このままファールをとり続けたらあと3回で退場になる」
そう、バスケはチームファールと個人ファールがあり、個人ファールは1人5回ファールを取るとその人は退場となりその試合は出れなくなる。
先輩はボールをとりたい気持ちを抑え、最低限立ち位置を変えたり、少しジャンプして、ディフェンスしたりしていた。しかし、生半可なディフェンスでは原隼中には勝てない。その後20点ほど入れられた。もう3ピリオド。
監督「もう、ファールしても気にするな!止めろっ!」
その監督は生徒を信じ、また生徒は監督を信じていた。2年間築き上げてきた絆は誰にも壊されない。
だから、先輩はこの指示に従った。
ピー、白、9番、プッシングフリースロー1本
ピー、白、9番、ホールディング、エンドから
「点差は10点差、もう4ピリオドまできた。残り3分。」
頑張れば勝てる、だか相手は互角のチーム。攻めることをやめボールを取られないようにするためにパス回しを繰り返す。シュートする。
この繰り返し、先輩たちは早すぎるパス回しに対応できず、シュートされないようにするのでていいっぱい。
ドンッ。
鈍い音がした。それはセンターの先輩が、体を張ってパスを止めに入った音だった。少し体が当たっただけなので、幸い先輩も相手も大きな怪我は見られなさそうだった。
ピー、白、9番、プッシング、退場。
フリースローから。
センターの先輩は泣きながらコートに礼をし、ベンチへ戻ってきた。そして監督の前へ行った。
監督「よくやった。十分だよ。お前の意地が出ていた。」
センターの先輩が抜けて、代わりにライバルのセンターの先輩が入った。残り1分。
だが、先輩たちにボールが渡ることはなかった。
ビー
試合終了。整列。
全員「ありがとうございましたっ」
これで先輩は引退した。
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