第3話 トラウマと友情
ティナ、
「コンビニで何か買っていくけど、ティナと凛夢は何か買う?」
と聞いてきた。
「ん~ん、私はいいや」
「私も大丈夫」
ティナと凛夢がそう言うと、
「じゃあちょっと待っててな~」
とリサと
その間、近くにある公園の隅のベンチに腰掛けるティナと凛夢。
ふたりは結構遊びに行ったり勉強することはあるのだが、他の友達を交えてというのは初めてだった。
「ねぇティナ。あなた
と言いかける凛夢にティナは、
「凛夢まで何言ってるの?そんなこと…」
と言いかけて俯く。
「…何かあった?」
心配そうな凛夢。
ティナは凛夢に、自分が暴漢に襲われたことを話していなかった。
「い、いや…何もないよ。何も…」
と言いながらもティナは、自分が襲われたときのことを思いだし、涙があふれてきてしまった。
「…何もないわけない。ティナがそんなに泣くなんて、辛いことがあったんでしょう?私に話してみて?誰にも言わないし、吐き出すことで楽になることもあるから」
凛夢の言葉に、ティナはぽつぽつとその時のことを話し始める。
凛夢も、ティナがどうしても話すのを拒むのならそれ以上聞くつもりもなかったが、ここは友達として、いや親友として悩みくらい聞いてあげたかった。
「暗くなり始めてるのに私がひとりで歩いてたから悪かったんだ。知らない男の人に暗がりに連れ込まれて、すぐに叫べばよかったんだろうけど、その内に口を押さえられて…」
ティナが泣きながら話すのを真剣な表情で聞く凛夢。
「下着脱がされそうになったところで、急にその男が吹っ飛んだの。そしたら奏斗くんが立ってて…」
ハンカチで涙を拭いたティナは、
「奏斗くんとはそれまで話したこともなかったんだけど、なんかとても怒ってくれてて。でもその男に殴り掛かってやりすぎちゃいそうだったから私が奏斗くんを引き離して大通りに戻ったんだ」
と話す。
「…そのこと警察には?」
「…言ってない…。もう思い出したくもなかったし、奏斗くんが優しかったからもういいかなって。でも、思い出すとダメだね…」
「奏斗くんはそのあとは?」
「家に送り届けてもらった後は知らない」
「じゃあ奏斗くんも他の誰にも言ってないんだ?」
「うん。多分。私がもういいって言ったから…」
「そう…」
「でもちょっとスッキリしたよ!ありがと凛夢」
「ううん、辛いこと言わせてゴメンね」
「でもちょっと心配なのが、あの暴漢また他の人襲ったりしないかなって」
ティナの言葉に無言の凛夢。
(…多分また襲うだろうね…その手の男はクセになってるだろうし、警察も知らないとなると)
考える凛夢の顔をティナが覗きこむ。
「凛夢?」
「あっ、ごめん。それより今から大丈夫?勉強とかしてる気分じゃ…」
「ううん。聞いてもらってだいぶ楽になったから…大丈夫!」
今度は凛夢がティナの顔を覗き込む。
「無理したらだめだよ?私がついてるからね」
「うん。ありがとう凛夢」
そこでコンビニからギャル二人が帰ってきた。
「ん?どうかした?」
「ダイジョブ?」
と心配そう。
「体調悪いなら今日はやめとく?」
「そうだべ。私らだけでやれっから」
とリサと
「大丈夫!特に
と答える。
「ひで~んですけど。でもそのとおりカモ」
と言って再びリサの家に向かい四人で歩き出す。
ティナの目が少し腫れているのはふたりとも気が付いていたみたいだが、それ以上は聞かなかった。
リサの家に到着し、家に上がり込む。
二階のリサの部屋はまさにギャルの部屋という感じだった。
ティナは何度か来たことがあるが、凛夢は初めてだった。
「やっぱ一戸建てがいいわな~」
「格差をなくすためにも留年なんかしてらんないな!」
達観したことを言いだす
彼女なりに住んでる家の格差を感じ取ったらしかった。
「そんなこといったら凛夢の家なんかすごいじゃん。入ったことないけど外から見たことはある」
リサが手で望遠鏡をつくりながら話す。
凛夢の家は所謂豪邸の部類に入る。
オシャレな建築で、使用人らしき人もいると近所では有名だった。
「私がすごいわけじゃないよ…」
と俯く凛夢。
デリケートな話題ととったのか、リサと
「じゃあティナ数学教えて!」
「じゃあ私は凛夢に…全部教えてもらう…」
リサは苦手な数学に集中するつもりだったが、
「
凛夢の優しい言葉に、今度は
「エヘヘ。エヘ。エヘヘ…」
「やだちょっと
とティナ。
「
とリサ。
しばらく勉強をしているとあっという間に時間がすぎる。
「あ、私もう行かなきゃ」
凛夢が時計を見て呟く。
すると三人とも、特に
「アタシをおいていくんか~?」
泣いてた。
「大丈夫…今日みたいに真剣にやれば
と拳を握りしめる凛夢に、
「がんばりゅ」
「あんたキャラ崩壊してるって」
涙目の
「じゃあティナふたりお願いね」
と手を振って凛夢が帰っていった。
(また病院かな…私も今度一緒に行こう)
ティナはふたりの勉強を見ながらそんなことを考えた。
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ティナ
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