その4 トラウマなんです!
ここにきて12日くらい経過したかな。
相変わらずはじめの1回以降は全然成功していない。
それで検証は色々してるんだけど・・・。
「うーん、材料の質、かなぁ・・・?」
よーく思い返しながら作業をしているときに気付いたことがひとつ。
リーゼさんが差し出してくれた素材って、
確か殆どが水分を飛ばしてたような気がする。
ドライフラワーほどじゃなかったと思うけど、
今使用している素材より、なんというかみずみずしさが無かった気がする。
でもどうしてそんな違いが出ていたのか。
保管の為?
品質保持のため?
それとも、そのほうがマナポーション作成が成功しやすいから?
ともかく気付いたんだから試してみるしかない!
そう思い立ったんだけど・・・
「そもそもどうやって水分を飛ばせばいいんだろう」
普通に考えると干しておけばいい。
けど時間がかかっちゃう。
なら・・・。
「熱で水分を蒸発させるか、乾燥させちゃうか・・・かな」
ならまずは水分を熱で蒸発させてみよう!
まずビーカーに魔力草をそのまま置く。
そして、いつもみたいに沸騰しない程度に熱してみる。
少しして、だんだんと黒色に変色しはじめてしまう。
「あ、コゲてる・・・」
慌てて火を止めて魔力草を冷ますけど、
黒く変色してしまった箇所はぼろぼろっと崩れてしまった。
「うう、これじゃダメかぁ・・・」
ひとまず黒くなってしまったところを削って確認してみる。
確かに少しは水分が飛んだ気はするけど、何か違う気がする。
試しにこれを利用して同じ手順で作ってみる。
なんだかコゲ臭い薬になってしまった。
「うう、これは・・・飲めない」
私はそっと失敗廃棄物として破棄することに。
ビーカーを片手に廃棄場所へと移動した。
この職人ギルドは駆け出しさんが訓練や練習をするために来るので、
当然失敗作なんて大量に作られてしまう。
武器や縫製による服や防具ならともかく、
調剤や錬金による失敗物は危険なものになってしまうこともある。
なので、廃棄するための場所がしっかりと用意されているので、
失敗物だと判断した場合はここに捨てる必要がある。
そこで私は、前に遭遇した王子様と、また遭遇してしまうのだった。
「貴様は・・・」
「え」
「貴様はっ!
まだここにいたのかっ!!」
「あ・・・、あの時の王子様・・・?」
「言ったはずだ!
召喚者には役割があると!
だというのに何故まだここに居る!!!」
「え・・・えっと・・・」
私を指差して怒鳴り始める王子様。
横には前にも居た近衛さん?がいるけど、止めてくれる様子はない。
それにここは廃棄場だからしーちゃんも居ない・・・。
ど、どうしよう・・・。
「我が国は世界を救う為に、
貴様たち召喚者を召喚した。
それはここでそのようなゴミを作らせるためではない!」
「う、うう・・・」
私の手には失敗物がある。
確かにゴミだけど・・・。
「もはや役立たずどころか損益しか出さぬような存在は不要だ!
ここで私自ら排除してくれる!!!」
「え・・・」
王子様が腰の柄に手を当て、剣を抜き放つ。
ぎらりと刃が光を反射し、私に照りつける。
「え・・・あ・・・」
ぺたりとその場に座り込み、その光景を見ることしかできない。
あまりの恐怖のせいか、頭の中が真っ白になる。
はじめての明確な殺意に・・・
違う。
私は一度、こういう目に遭ってる。
息が苦しい。
震えが止まらない。
私に向けられた殺意が、刃を通じて私をずたずたに切り裂いていく。
「で、殿下!流石にそれは・・・!」
「黙れ!
己が使命も分からぬ奴など、不要だッ!!!」
王子様の剣が振り下ろされ・・・
そこで私の意識は途切れた。
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「・・・あ、れ?」
ここは、どこだろう。
少し薄暗い場所。
頭に何か乗っかってる。
「・・・タオル?」
「ルミナ!
目が覚めたの?ルミナ」
「え・・・」
横手からの声に顔だけ向けると、
不安げな顔をしたしーちゃんが座ってた。
「あれ・・・しーちゃん?」
「よかった・・・待ってて、今ハゲ呼んでくるから!」
「え・・・うん」
しーちゃんが横を向いて落ちたタオルを頭に乗せ直して、
その場から立ち去っていく。
少ししてハゲドールさんがどたどたと私の元に駆け寄ってきた。
「よかった、気が付いたな嬢ちゃん」
「えっと・・・」
「あぁ、いい、そのままで」
起き上がろうとした私をそっと抑えて、そのまま横になれと促すハゲドールさん。
その横でしーちゃんが安堵した顔で私を見ていた。
「ずっと目覚めなかったから心配したよ・・・」
「えっと、私・・・」
「あー、なんだ、怪我はしていない。
あのバカ野郎に斬られそうになったが、斬られてないぜ」
「あ・・・」
そうだ、私。
王子様に斬られそうになって・・・
思い出すと震えが止まらなくなる。
息が、できなくなる。
過呼吸気味になっていく私に、
大丈夫、もう大丈夫だからと手を握ってなだめてくるしーちゃん。
「悪い、思い出させたか。
ただ、一応確認だけでも可能な範囲でさせてくれ」
「は、はい」
「やっぱり、あのバカに武器を向けられて、
あろうことかそれで攻撃された、合ってるな?」
「は、はい・・・」
「だから反対だったんだよ帯剣しての利用はよ・・・」
ハゲドールさんが頭を搔きながら呟いた後、
とにかく今日はゆっくり休んでくれ、と立ち去って行った。
「・・・大丈夫?ルミナ」
「・・・」
怖かった。
また剣を向けられたのが、怖かった。
そして思い出した。
どうして私が死んでしまったのか。
そうだ、私、
魔導錬金術師だと罵られながら、武器を向けられて、斬られたんだ・・・。
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