魔法が解けたら会いに行く

社不

第1話 魔法少女の役目

「きゃーッ」

昼頃の街中で悲鳴が響く、そんなことは当たり前で何時ものこと、そして

「大丈夫ですか?」

魔法少女がすぐさま駆けつけあっという間に敵を倒すところまでがテンプレート、そんな世界

「助かりました!」

皆が魔法少女を讃え、尊敬し、崇拝し、そんな世界

「いえいえ、これも我々の約目ですから」

いい子ぶって馬鹿みたい、苦しくないのか心配になるね、

「それでは、私は次のところに行くので」

そう言って一人の魔法少女はどこかへ消えた

讃え崇拝される魔法少女だが皆が望みなったわけではないなりたい人間もいるかも知れないがそんなのごく僅かに過ぎない。

正直、世界に命をかける人はそんなにいないと思うだって皆自分が大事だから。

他人が死んだところでどうってこともない。

だって自分の大切な人でもないんだから。

そんなものになってしまった魔法少女達は苦しくないのだろうか、いや苦しい

目の前で殺される仲間、攻撃を受けた時に治らなくなった数々の傷。

そんなもの見たくないに決まってる。

それに世界と人々の命なんて背負いたくない。

そんな期待と責任、どれだけ認めて欲しくても重たくって仕方ない。

「そんなもんか」

つい言葉が溢れる。

どれだけ嫌でもやめられないそれが『魔法少女』

一回契約してしまえば死ぬまで解放されない、いっそのこと死んでやろうかと思ってしまうほどの苦痛。

そんなもの

魔法少女ってなんなんだろ。

人々を守る道具?

世界のおもちゃ?

そうかもしれない、本当は正義のヒーローなんかじゃないただの世界へのエンターテイメントみたいなそんなものかもしれない。

否定できない、私達はただのおもちゃなんだ。

壊れたらポイ、皆興味が失せる。

「私達は皆を守らないと!」

キラキラしたその子はきっとそういう、

でもねそんな綺麗事言ってられない、守りたくない、あんなやつら皆消えればいい。

そう思いながらも助けて、助けて、…

わからなくなる

「魔法少女の本当の役目を教えてあげるよ」

同じ魔法少女の青年はそう言った

「魔法少女はね、人を救うためにいるわけじゃないのかもしれない、最近気づいたんだ」

淡々とした抑揚のない声

きっと彼はもう堕ちるとこまで堕ちてる

それでも耳を傾ける、

「魔法少女はただのおもちゃに過ぎないよ」

「世間という大きな子どものおもちゃさ、ほらみんなSNSで僕らで遊んでる」

そう言い笑いながらスマホの画面をスクロールしている

「…世間ってそんなものでしょ?」

ついそう言う

「あぁ、そうだね、世間はそうだよ新しい話題を探したくて仕方ない、人を叩いて壊したくて仕方ない…ねぇ、君はあの魔物たちの正体を知ってる?」

そう問いかける

「…知らない、どこからかの宇宙人じゃない?」

そういうと彼は目を丸くして笑った

「ははッ、宇宙人…ねぇ…面白い、不正解さ」

「正解は…世間だよ」

「世間が生み出す負の感情、それが魔物の正体さ、ねぇ…これを聞いても、あんな奴らを守りたい?」

「自分たちで魔物を生み出して、守ってもらえなかったら僕らを叩く…君は、どう思う?」

光すらも弾いたその瞳で私を見つめる

「、でも、魔法少女だもん、私達、抗えないよ抗いたくても」

そんな綺麗事しか口からでてこない。

きっとこの回答は彼にとっては面白くない。

でもごめんね、私は綺麗事しか言えないみたい。

だって彼のいうことはすべて魔法少女の役目でしかないから。

人を守るのも、少しミスをすると世間に叩かれるのも、世間の生み出した魔物を倒すのも…全部私達の役目でしかないから。

そう、魔法少女の役目なんだ。

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