異世界色屋
東井タカヒロ
色褪せない
僕は代々伝わる染屋の家系に生まれた。
幼少の頃から歴代最高の天才と呼ばれて育った。
絶対色調を持ち、様々なものの色を変える僕は重宝されていた。
染屋を誇りにも思っていたし、楽しかった。
「お父さん!新しい色を作ったよ!」
「よし、店に並べよう!」
明るい日々を過ごして浮かれていた時にそれを拾った。
瑠璃色に光り輝く石を拾った。
美しく、その色が欲しくて何度も調合したが、その色は作れなかった。
「今この國にある素材だけでは作れない…もっと素材を探さなくては」
店番を弟に任せ、僕はその色を探す旅へ出掛けた。
何年も探しているうちに違和感に気付いた。
ある時から鏡を見ても自分の顔があまり変わっていないことに気付いた。
最寄りの医者に駆け込むと不老病という病だと言われたのだ。
「医者よ、その病は治るのか」
「残念ですが治す方法はありません。」
絶望していた。それと同じぐらい興奮もしていた。
「何か発作とかあるのか」
「いえ、ただ老いて死ぬことは無いということです。」
僕は一度実家に帰ることにした。
帰ったのは家を出てから30年後だった。
「ただいま……」
「兄さんは歳を取らんな!」
「悪いことをした」
「ゑ?意外とこの染屋も悪くねぇぞ。一番人気は兄さんが子供の頃に作ったあの色の布だ。」
その色は今の僕から見たらとても不出来だけど、そこにまた美しさがあった。
「家に入っても良いか?」
「?俺らの家だろ」
「そうだな」
棚の奥に隠してたあの光り輝く石を取り出す。
箱を開けると、ただの石ころが大切に保管されていた。
後で分かった話だが、その石は吸光石といって、光を吸収して暗くなると光る石だったらしい。
「自分の色は自分で見つけるしか無いということか」
「なぁ、俺も店番やって良いか?」
「人手が足りないんんだ、兄さんも手伝ってくれ」
「ああ!死ぬまで手伝ってやる」
かつて見た景色の色は完全に再現することは出来ない。
美しいあの色は心に残し、僕はここで自分の景色の色を探すことにしようと思う。
何年かかったとしてもいつかは出きると思う。
何故なら僕らの色は輝いているから。
異世界色屋 東井タカヒロ @touitakahiro
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