学園もののBL短編

イスゥジオ

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 親友のベリーくんは僕のことどう思ってるろうね。


 なんだか最近、ベリーくんの本当の気持ちを知りたいことが多い。


 それは、僕自身の行動によってベリーくんが受ける影響のことを心配しているんじゃなくって、ベリーくんの心の奥底からこんこんと湧き出る僕への気持ちを浴びてみたいっていう気持ちである。


 ベリーくんはとってもおしゃべりな奴だ。


 今日の朝だって登校中に


 「なあ、アキペロちゃん。俺はな、俺はな、朝ごはんはパンがいいと思うんだ。ほかほかだろ?? ほかほかはいいよな。俺ってのはほかほかが好きだよ」


 なんて鼻歌混じりにはしゃいで言っていた。多分、朝ご飯のベリーくんおばあちゃん特製の手作り焼きたてパンが最高に美味しかったんだろう。


 それから、授業中だって隣の僕に対して


 「なあなあなあなあ、アキペロちゃん。数学というのはいいな。本当はエックスじゃなくてもいいらしいぜ。俺はこれから、何を代わりにしようかなあ。ああ、でも代わりを見つけたらエックスが可哀想か? なあ、アキペロちゃん」


 と、なんか元気そうだ。


 帰りのホームルーム、僕は決心した。ベリーくんに僕のことをどう思っているのか聞いてみるのだ!!!


 ベリーくんは足が速い。放課後も一目散に彼の所属するテニス部に向かう。


 僕はテニス部には入ってないので、ベリーくんがテニスに夢中になる前に捕まえて、練習終わりに話すことの約束をする必要があった。


 「ベリーくんっ!!」


 僕が教室から風を切るようにいなくなろうとするベリーくんの背中に叫ぶ。


 「おや、アキペロちゃんではないか。俺の大好きなアキペロちゃん、君から話しかけてくるなんて珍しいね。どうした?」


 ベリーくんは早く部活に行きたいろうに、その高い背を少し縮めて僕に目線を合わせてくれながらいつもの口調で僕に問う。


 ああ!! なんだか僕はこのベリーくんの優しさの虜になっていることをいつも以上に自覚してしまった!!!


 「ねえベリーくん。僕ってば、君と話したいことがあるんだ。もし良ければ練習が終わった後でいいから一緒にお話ししながら帰ってくれないかい?」


 僕が少し早口で、それにベリーくんから目を逸らしてそう言うと、ベリーくんは僕と目を合わせるために首を傾げながら口角を上げてこう言った。


 「なあ、アキペロちゃん。君ってばひたすらに可愛いんだな。俺はアキペロちゃんのお願いならなんだって聞くんだよ」


 ベリーくんはどうやら一緒に話しながら帰ることを了承してくれたらしい。


 「そうしたら僕は図書館で勉強をして待っているから、練習が終わったら来てね!」


 ベリーくんは頷いてから、僕に合わせていた目線をぐうっと上げて、スタスタと早足で部室に向かっていった。




 さて、勉強は、すぐに飽きる。僕はすぐに寝てしまって、目が覚めたらもう夕日が落ちていた。


 「ああ、ベリーくんってば僕のこと忘れてないだろうか......」


 寝ぼけ眼で見る窓の外が暗いから僕は心細くなってしまった。


 すると後ろからくすぐるような笑い声が聞こえてきた。


 「ふふっ、アキペロちゃんったら。寝てたと思ったら変な心配をして、面白いんだなあ」


 振り向くと、笑うときの癖で口元を隠しているベリーくんがいた。


 「ベリーくんっ!! いつの間に!?」


 「30分前くらいかな。アキペロちゃんを次こそは起こそうと思っても、君ってば寝顔が可愛いんだから起こせなかったんだ」


 「え!? 30分!? そんなに長く......」


 上機嫌なベリーくんに対して、僕ってば落ち込んでしまった。


 これではベリーくんと話す時間が短くなってしまうんじゃないかって。


 「アキペロちゃん。君は常々俺のことを親友かというけどな、俺はアキペロちゃんのこと、親友だとはひとつも思っちゃいないんだよ」


 ベリーくんは、蛍光灯の光に照らされてそんなことを言った。ちょっと唇が揺れている。眉毛も自信が無さげだ。声も小さいし......。


 「ベリーくん、どうしたの......?」


 「アキペロちゃんは、俺の気持ちが知りたいんだろうけど、俺は、アキペロちゃんの思うほど綺麗ではないから、だめなんだよ」


 なんで、ベリーくんが、僕が話を聞きたかったことを知っているんだ。


 ふと目線を落とすと開かれたままのノートがあった。


 そこには僕の汚い字で


 ベリーくんは僕のことどう思っている? 僕は親友だと思っているけどベリーくんはどうなんだろう 彼ってば重要なことは隠すから



 と書いてあるのが丸見えだ。暇だったから書いたのだった。失念。


 「なあ、アキペロちゃん。俺がアキペロちゃんをどう思っているか、薄々勘づいているんじゃないかい? 知っているだろ」


 そう言われると、僕はもう頷くしかなかった。


 そもそもベリーくんというのは、僕以外にはお喋りではないし、笑わないし目線を合わせないし、テニスは大好きの男だ。


 ベリーくんが話しかけるのは僕にだけだし、最近に至っては目を合わせすぎである。わざわざその高い背を少し縮めて話してくれるのである。


 「アキペロちゃん。君は俺の気持ち全部知ったら怖がらないかい?」


 ベリーくんはなんだか泣きそうだった。

 僕はなんだか自分がすごく狡い存在だと思った。


 「ねえベリーくん。僕ってば、ベリーくんの好意を浴びたくて浴びたくて仕方がないんだ。ベリーくんは、いつもそのあっつい目を僕に向けるだけで、それ以上踏み込まないじゃないか。僕はね、その熱い目のその先のことが酷く魅力的に感じるんだよ」


 僕はベリーくんのタガを外すように意識してそう言った。ああ、これじゃダメか。僕も本気で言ってない。


 「ベリーくん。ベリーくん。僕はベリーくんの全てを知りたいんだよ」


 今度はベリーくんの真似をしてベリーくんの目をしっかりと見てそう言う。


 すると、沈黙していたベリーくんは久しぶりに口を開いた。


 「君は俺のこと、失礼だと思わないんだな」


 失礼? ベリーくんの言葉を全く理解できなかった。ベリーくんに失礼なことがあったか? 考えあぐねてもわからない気がするからベリーくんの次の言葉を待つことにした。


 「君のことをアキペロ"ちゃん“と呼んでいるだろ」


 「どういうこと?」


 「君を、可愛いから、女っぽく扱っているだろ」


 「そう、だったの?」


 「そうさ、俺は、アキペロ......ちゃんのことを女に見立てて接しているよ。可愛いし、好きだから。女だったらいいのにと思って。俺は男に恋しないし。俺は、アキペロちゃんが好きだけどアキペロちゃんは男だから恋ではない友情でだから」


 なんだか、ベリーくんは何を言っているんだろう。ベリーくんは焦っているのかな。ずっとずっと心の奥底でこう言うことをぐちゃぐちゃと揉んでいたのかな。


 「ベリーくん、ベリーくんはきっと僕のことをオカズにしたことがあるね」


 「......」


 ベリーくんは気まずそうに首を垂れて黙っている。


 「最近ね、僕もベリーくんをオカズにしたんだよ。僕の想像の君はね、背が高い体が僕に合わせて縮まって、それで、今気まずそうに逸らしている目が僕にずうっと夢中で熱くて熱くて気持ちよく感じたんだよ」



 ああ!! 恥ずかしそうに頬を染めるベリーくんが可愛らしい!!!


 ベリーくんはテニス部に向かうときみたいに早く僕に抱きついて、体を縮めて僕の唇をその大きな唇でギュウっと齧り付いた。


 「んっ......、べ、ベリーくんっ......」


 「アキペロちゃんって、本当に可愛いんだ」


 ベリーくんのシャツの胸元のをクシャクシャに掴んだ。いつのまにかベリーくんは僕のお尻を両手で掴んでいた。


 「アキペロちゃん。アキペロちゃんの好奇心には降参だな。俺は、もう、隠していることなんて何にもないよ。ただただアキペロちゃんの全てが欲しくてたまらない嫌な男だよ。それから君を犯したい。もうダメなんだ俺は。お前を女みたく思うんだ。ダメだろ?」


 「ううん、君の感じていることは、本当は感じなくていいことなんだよベリーくん。ねえ、早く、僕を気持ちよくさせてみてよ」


僕は縮まっているベリーくんの肩に手を回してそう言った。


 それから開かれたノートの上に押し倒されて、それから、は、教えてあげないけど、君が想像する以上によかったから、君は想像できなくて残念だね。

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