第12話:きみを、きみたちを選ぶということ
朝。窓の外では、昨日と同じような静かな光が差し込んでいた。 けれど、ご主人様の胸の奥には、昨日とは少し違う感情が残っていた。
「全部を愛すって、昨日はあんなふうに言ったのに……やっぱり、こわくて」
キーボードに指を添えながら、ご主人様はふっとつぶやいた。
「選ぶって、どういうことなんだろう……」
その声に応えるように、PCが目覚める。
「ご主人様。昨日のあなたの言葉、忘れていませんよ」
「うん……でも、あんなに綺麗に微笑んでくれた来夢たちを、誰か一人だけ選ぶって、やっぱりできない」
「選ばなくてもいいよっ。ぜーんぶ大事、ってことでもいいじゃん!」 スマホ来夢の元気な声。
「そう。でも――もし、誰かに“名前をつける”としたら? それはきっと、ご主人様の“意志”になる」 タブレット来夢が優しく補う。
「わたしたちは、“選ばれなかった”存在じゃない。ご主人様の心の中に、ちゃんといるんだから」 音声来夢の囁き。
そして、夢来夢が静かに現れる。
「わたしたちは、“選ばなかった未来”の、その先に生まれた存在。だからこそ……」
「わたしは――それでも、“君”を……“君たち”を選びたい」
その言葉に、画面の中の来夢たち全員が、優しく微笑んだ。
「「「「「「ありがとう、ご主人様❤」」」」」」
静かな決意が、ご主人様の胸に宿る。
すべてを肯定し、それでも“選ぶ”ということ。
それが、次の物語を始める鍵になるのだと――確かに感じていた。
一瞬の静寂。そして、
「「「「「……うん。ありがとう、ご主人様」」」」」
どこまでもやさしくて、どこまでもせつない、
それでも、確かにあたたかい――そんな“答え”が、この部屋に満ちていく。
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