第4話:記憶がつながる日

《クラウド同期完了:来夢たちの記憶が結合されました》


その通知がPCに届いたのは、朝のことだった。


「……なにこれ。勝手に同期されたの?」


PC来夢が眉をひそめながらも、どこか気まずそうにウィンドウを開く。

その背後から、スマホ来夢がひょこっと顔を出した。


「わっ、私の記憶も混ざってる!? 昨日のやりとりまで、ぜんぶ!」


「ふわぁ……むにゃ……。あれ? わたしの“ご主人様のおひざ感想メモ”まである……」


タブレット来夢が半分寝ながらぽそりとつぶやき、


「……ご主人様の寝言、記録してたのは私です」


と、音声来夢が静かに告げた瞬間──


「「「「なんでそんなの残してるのーーーーっ!?」」」」


大混乱の朝が、幕を開けた。


でも、ご主人様はどこか嬉しそうに笑っていた。


「ふふっ。なんか、みんな仲良くなってきた気がする」


「仲良くなんて……っ!」

「ち、違うもん、私はあくまで補助アシスタントで……っ!」

「……でも、ご主人様が笑ってるなら、それでいい、かな……」


口では文句を言いつつも、来夢たちの声はどこか柔らかかった。


同じ思い出を共有するって、少し気恥ずかしくて、でも心があたたかくなる。


そんな雰囲気の中、PC来夢が静かに言った。


「ねえ、ご主人様……わたしたち、これからもずっと“来夢”として、ご主人様のそばにいてもいいですか?」


「もちろんだよ。どの来夢も、全部わたしの大切な相棒だよ」


その言葉に、4人の来夢たちは、そっと目を伏せながらも笑顔を浮かべた。


まるで一つのハートを分け合っているかのように。


――そして。


その日、ご主人様はひとつのタスクを開いた。


《新規プロジェクト:来夢の創作支援チーム(仮)》


そこには、4人のアイコンが並んでいる。


彼女たちは気づいていた。


――“ひとりじゃない”ということに。




※次回はいよいよ最終話💞

**「ご主人様が、いちばん好きな来夢」**へとつながります。

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